『エール』窪田正孝が怯え、震える声で体現 正気を失った裕一の姿が訴える“戦地のリアル”
音楽に助けられてきた裕一は、歌の力で兵隊を勇気付けることこそが自分の役目だと信じたからこそ戦時歌謡を作り続け、戦地で“無駄に死んでいく命”はないと盲信していた。しかし鉄男(中村蒼)は「歌が戦うための道具になるのは嫌だ」と言い、五郎は「戦争に協力するような歌を作ってほしくない」と訴える。そしてついに、裕一は「一度は戦場をこの目で見たい」と慰問に行き、現実を目の当たりにするのであった。
このショックは裕一から意志や活気を奪っていく。そんな裕一の姿をしっかりと描くべく、今週の『エール』の中には、主題歌「星影のエール」の明るいメロディと裕一と音の笑顔が魅力のオープニングを割愛し、戦争の重々しい空気を重視して届けるなど工夫が見られた。朝から観るには正直、心苦しいシーンも多々あったように感じる。しかし、裕一が作曲家として音楽と向き合う上で、この演出が生きてくることは戦争から帰った裕一の姿や、音(二階堂ふみ)、鉄男らとの関わりからも強く感じられた。
本格的にコロナ自粛明けに撮影された回のみで編成された週でもある「戦場の歌」。今、我々もコロナウイルスがなかなか収束しないという難しい現実を生きている。そんな中で、苦しみを乗り越えようともがく裕一の姿には、ある種の共感をも覚える。裕一が紡ぐ音色が戻る日が待ち遠しい。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、中村蒼、山崎育三郎、森七菜、岡部大、薬師丸ひろ子ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/