『エール』窪田正孝が怯え、震える声で体現 正気を失った裕一の姿が訴える“戦地のリアル”

『エール』裕一の姿が訴える、戦地のリアル

 戦争の過酷さを目の当たりにし、心身ともにショックを受けている裕一(窪田正孝)。最愛の恩師、藤堂先生(森山直太朗)との別れを経験し、音楽への向き合い方にも変化が感じられた。『エール』(NHK総合)第18週「戦場の歌」では、裕一の今後の人生に大きな影響を与えるであろう出来事が立て続けに起きた。

 音楽を諦めそうになったり、なかなか売れる曲が書けないなどの苦悩を抱えたこともあった裕一。しかし、自分の信じた道を全うし、愛する家族との満ち足りた生活を送ってきた。窪田はそんな裕一を朗らかで優しく、才能に愛された人物として演じてきた。

 だが、第18週では戦争の悲痛さ、裕一が“知らなかった”現実、大切な人を目の前で失うことの衝撃などが痛烈に描かれる。「音楽」だけを突き詰めてきた裕一が改めて見た戦地の実情は、東京に帰ってからも簡単に胸から離れるものではなかった。

 窪田はショックを受ける裕一の姿をかつてないほどの生々しさで演じた。銃弾に怯える叫び、震える声、「何も知りませんでした」「ごめんなさい」と繰り返すうわ言のような言葉は、正気を失い、恐怖に支配された人間の姿であった。窪田の表現するそれは、涙や声の大きさだけの一辺倒なものではなく、戦地の「惨状」が恐怖として瞳に焼き付いてしまった者の苦しみを浮き彫りにしていた。

 これまで明るく朗らかな主役として『エール』をリードしてきた窪田だが、こちらまでもが恐怖に震えるほどのリアルな姿を見せ圧倒する。銃や手りゅう弾に倒れる兵士を映すだけでなく、その一部始終を見てしまった窪田の痛々しいまでの姿を映し出すことにより、作品はより深く視聴者に届いたことだろう。

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