“インパール作戦”の前線は“地獄” 戦時下を描く『エール』の恐ろしさ

“インパール作戦”の前線は“地獄” 戦時下を描く『エール』の恐ろしさ

 裕一(窪田正孝)は慰問でビルマ(現在のミャンマー)を訪れる。NHKの連続テレビ小説『エール』が第18週の初日を迎えた。裕一より一足先に前線へ向かった洋画家の中井潤一(小松和重)は、前線を「地獄」と呼んだ。

「僕の曲作りは、人との触れ合いの中で生まれてきました。だから一度は戦場をこの目で見たい」

 物語冒頭、裕一はこう語っていた。人の心に寄り添う曲を作り続けてきた裕一は、国のために命を懸けて戦う人を現地で応援するために戦場へ向かう。

 裕一が訪れたビルマは“インパール作戦”が展開される激戦地だが、インパールを陥落させる作戦は予定どおりには進んでいなかった。裕一とともに慰問に来た作家の水野伸平(大内厚雄)と中井は、裕一より先に前線へ行くことが許された。

 ビルマに来て2カ月経っても、裕一に戦地に行く命令が出ない中、中井が帰ってくる。前線に行く前の中井は、背筋を伸ばした姿や落ち着いた雰囲気が印象的だった。しかし戻ってきた中井は、裕一に声をかけられるまで一点をぼーっと見つめてうなだれており、見た目からも表情からも疲れ切っていることが分かった。中井が手渡したノートには、薄暗く、はっきりとは映らなかったものの、痩せ細った兵士たちの姿や戦う前に命を落とした人の姿が描かれていた。

 前線を目にした中井が口にした現状、そして彼が描いた絵が壮絶さを物語る。が、それ以上に虚しさを感じさせられたのは、中井に対する裕一の台詞だ。

「あの……日本に勝てる見込みは?」

 裕一はまだ戦地に向かうことができていない。司令部で聞いた話などから、作戦が予定どおりに進んでいないことは分かっているが、それでもなお、命を懸けて戦う人々を応援したい彼の純粋な気持ちが「勝つ」という言葉を口にさせる。「全て無謀で無駄な死……まさに犬死にです」と話していた中井は、裕一の言葉にはっきりと返した。

「古山さん……日本は負けます。命を尊重しない戦いに未来はありません」

 地獄を見た者とまだ目にしていない者。その対比をまざまざと感じさせられる回となった。裕一は水野が前線に向かう前、水野から「ビルマ派遣軍の歌」の詞を託されている。水野たちが去った後、裕一はすぐに曲を書き始めていたが、彼が前線を目にしたとき、その曲はガラリと姿を変えるのかもしれない。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、中村蒼、山崎育三郎、森七菜、岡部大、薬師丸ひろ子ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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