横浜流星による想定外の化学変化? 『私たちはどうかしている』原作とは異なる味わい

『わたどう』横浜流星によって化学変化?

 おそらくキャスティングの時点では、横浜だけをクローズアップする意図など、なかったはずだ。しかし、彼の醸し出すウェットな孤独感は、徐々に椿という人物を、体温のある人間に変えていった。

 これは、横浜自身が、極真空手をずっとやってきた経験からくる、硬派な体育会気質と、誰にも頼ることができない個人競技で戦ってきた「孤独感」による部分もあるだろう(実際、インタビューでは「孤独だった」思いを何度か語っている)。

 しかし、そんな椿の放つ異質な魅力に触発されたのか、作り手もそれを生かす方向に、ややシフトしてきた感がある。これはもしかしたら想定外の化学変化によるものなのではないだろうか。

 作品の味わいとしては不思議な感触があり、どんな見方をして良いか戸惑う部分もあるが、横浜の役者としてのポテンシャルを感じずにはいられない『私たちはどうかしている』。作品としての迷いも含めて、先の読めない展開に注目したい。

※記事初出時、一部に記述の誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
『私たちはどうかしている』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:浜辺美波、横浜流星、高杉真宙、岸井ゆきの、和田聰宏、岡部たかし、前原滉、草野大成、山崎育三郎、須藤理彩、中村ゆり、鈴木伸之、佐野史郎、観月ありさ
原作:安藤なつみ『私たちはどうかしている』(講談社『BE・LOVE』連載)
脚本:衛藤凛
演出:小室直子、猪股隆一
音楽:出羽良彰
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:鈴間広枝、松山雅則(トータルメディアコミュニケーション)
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:www.ntv.co.jp/watadou
公式Twitter:@watadou_ntv
公式Instagram:@watadou_ntv

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