石橋静河、映像界で引っ張りだこ 気鋭のクリエイターからのオファーが相次ぐ理由
FODで配信された『東京ラブストーリー』でヒロイン・赤名リカを演じ大きな話題になった女優・石橋静河。父に石橋凌、母に原田美枝子を持つ、いわゆる二世女優だが、独特の佇まいと説得力のある演技で、いま映像界では引っ張りだこの存在となっている。
石橋が映画界で注目を集めたのは、石井裕也監督作『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(2017年)だろう。石橋はほとんど映画出演経験がないなか、池松壮亮と共にダブル主演を務めた。石橋が演じたヒロイン・美香は、昼は看護師、夜はガールズバーで働く女性。常になにかに対して不満を抱いているような佇まいを醸し出し、抜群の存在感をスクリーンに焼きつけた。
本作で石橋は、第91回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞をはじめ、数々の映画賞を受賞。その後、映画、ドラマ、舞台はもちろん、ミュージックビデオやCMなど、幅広いジャンルで表現を続けているが、一流の制作陣による作品の質の高さには舌を巻く。
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』についで印象的だったのが、三宅唱監督がメガホンを取った『きみの鳥はうたえる』(2018年)だ。石橋は柄本佑、染谷将太という才能溢れる俳優と共にときを重ねる女性・佐知子を演じた。3人の空気感は芝居をしているというより、ドキュメンタリーを撮っているような感覚。観客はまるでそこにいるかのような没入感に浸れる。柄本、染谷のリアリティはもちろんだが、なかでも石橋のなまなましさは特筆ものだった。
その後も、広告業界で数々の賞を獲得し、Mr.Childrenや奥田民生、安室奈美恵などのMVを手掛けた関根光才監督の『生きてるだけで、愛。』(2018年)や、脚本家・岡田惠和と峯田和伸原作の小説を映画化した『いちごの唄』(2019年)などの作品で、しっかりと余白を想像させる芝居はとても文学的。映画の間にピッタリの女優だと感じられる。