『竜の道』疎外感を抱え続ける玉木宏の苦悩 第1話の決裂を想起させる復讐計画のほころび 

『竜の道』疎外感を抱え続ける玉木宏の苦悩

 そんな中、竜二は「キリシマ急便への復讐が終われば、誰も俺たちの知らないところに行って3人で一緒に暮らそう」と夢のような仮定話をする。竜二に何かあれば悲しむのは美佐だ。でも自分に何かあっても案じてくれる相手などいない。そんな気持ちの中、また大切な弟と妹を守らんとするために発する「お前と俺は違う」という決別の宣言。

 竜二も竜二で、美佐が自分たちの復讐計画の核心にどんどん迫る様子を直近に感じて焦り、憎き復讐相手・源平の長女まゆみ(松本まりか)の傷に触れ、単なる復讐の道具と思っていたまゆみに対して、それ以上の感情が湧き始めている。これには竜一も、「あんまり深入りするなよ。竜二は優しいからな」と釘を刺す。頭の良い竜二にとって、「その場しのぎ」の対応こそが、知らず知らずのうちに自身の首を絞め悲劇をもたらすことなんて自明のことであろう。それでも「その場しのぎ」を重ねなければならない根なし草のような自身の日々。

 また、まゆみとの交際を兼ねてから不審に思っていた源平にも身辺調査を入れられ、自分の出自を知られてしまう。源平の攻めの一手に対して、咄嗟に機転を利かせ見事応酬した竜二。源平の前で、大切な両親に対して敢えて侮辱し卑下するような発言をしなければならない屈辱。エリート官僚として着々と出世を重ねながら、表の道から仇を打とうとする竜二もまた並大抵の胆力が備わっていないと無理である。自分で自分の心を、傷をえぐるような場面に出くわし、ただその痛みに耐える竜一と竜二の姿に、思わず目を背けたくなってしまい観ていられない。

 「兄弟なのに他人の振りして、俺たちなんでこんなことしてんだよ。父さんと母さんの仇をとるためだろ。竜一のしたことは俺も背負う。俺たち家族だろ」と、まだ竜一の罪を知らない初期の段階で力強く言い放っていた竜二。罪を知った今なお「俺はそれでもお前と行くぞ。お前と俺は2人で1つだろ」と力強い抱擁を見せた双子。張り詰めていた竜一の表情から涙が溢れる。

 ここで忘れてはならないのが、第1話の冒頭シーンである。運命共同体を誓い合った2人が、なぜ。激しく壁に顔面を殴打させられ血塗れになった竜二と、その後頭部に銃口を向ける竜一、2人の姿が脳裏をよぎる。どこでどうボタンを掛け違えてこのような展開を迎えてしまうのか。どんどん関係者を広げて、もはや止まることのできない暴走列車状態で突き進む復讐計画がどんな末路を迎えるのか。遂に折り返し地点を迎えた本作、ヒリつく胸の痛みを抑えながら、それぞれが抱えた傷をなぞりながら見守りたい。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『竜の道 二つの顔の復讐者』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:玉木宏、高橋一生、松本穂香、細田善彦、奈緒、今野浩喜、渡辺邦斗、 落合モトキ、西郷輝彦(特別出演)、松本まりか、斉藤由貴、遠藤憲一ほか
原作:白川道 『竜の道』 (幻冬舎文庫)
脚本:篠崎絵里子(「崎」は「たつさき」が正式表記)、守口悠介
音楽:村松崇継
主題歌:SEKAI NO OWARI 「umbrella」(ユニバーサル ミュージック)
オープニング曲:ビッケブランカ 「ミラージュ」(avex trax)
プロデュース:米田孝、水野綾子
演出:城宝秀則、岩田和行、紙谷楓、吉田使憲
制作:カンテレ、共同テレビ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ryu-no-michi/
公式Twitter:https://twitter.com/ryunomichi_ktv

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