『竜の道』疎外感を抱え続ける玉木宏の苦悩 第1話の決裂を想起させる復讐計画のほころび 

『竜の道』疎外感を抱え続ける玉木宏の苦悩

 『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)第5話では、竜一(玉木宏)と竜二(高橋一生)の復讐計画のほころびが一気に露呈した。

 そしてこれまで誰にも明かしてこなかった竜一の罪、ブラジルに行き和田猛になる前に人を1人殺めていることを遂に竜二に明かす。「お前と俺は違うんだ。お前はこの計画から外れて、苦しまず、誰も苦しめずに日向を堂々と歩いていけ」と言い放つ。

 本作は、とにかく毎話切なさのオンパレードだが、特に、常に身を裂かれそうな痛みを抱えているのは竜一だろう。これまでも彼は人を殺めた瞬間を悪夢で見てはうなされ、自分の汚れてしまった手を見つめながら苦悩に塗れた表情を見せることもあった。血の繋がらない妹・美佐(松本穂香)を巻き込まないために、名前も顔も変えた竜一は、彼女の前で自身の身分を偽る。それは自分が望んだことだったはずだが、いざ竜二と美佐が兄妹として並んでいる姿を見ると、自身の中に渦巻く疎外感を禁じ得ない。

 第4話、間一髪のところで美佐を窮地から救い、タクシーに乗せた瞬間。驚き「何でここに?」と問う美佐に何も答えられず、走り去るタクシーをただただ見送る竜一の姿に漂う哀愁。観ているこちらの胸まで張り裂けそうだった。

 極めつけは、美佐に言われた「兄(竜二)に何かあったら私はあなたを許すことができません」。竜二と同じ立場にも関わらず、自分は美佐を目の前にして「俺はお前の兄だ」と名乗り出ることができない。たった3人の家族なのに。捨て子だった自分を引き取って愛情いっぱい育ててくれた両親との唯一の繋がりである美佐がこんなに近くにいて、両親の自殺の真相を知り苦しんでいるのに、親族として声さえ掛けられない。

 霧島源平(遠藤憲一)への復讐のために別人に生まれ変わり、何もかもを捨てた竜一にとって、もはや復讐計画自体、それだけが「自分が何者なのか」というアイデンティティーになっている。

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