『MIU404』が『アンナチュラル』の世界線と繋がっている意味 ガマさんと中堂の運命の対比
ここで、一つの疑問が湧く。それは、ガマさんほどのベテラン刑事が完全犯罪を成立できなかったのかということ。未解決事件に模してごまかしたものの、本気で隠蔽しようと思えば、いくらでも方法は浮かびそうだ。ましてや堀内の首にロザリオをかけ、凶器は家の中に放置……。その様子を見ていると、まるで見つけてみせろと言わんばかりだ。
もしかしたら、ガマさんは自分の罪を天に預けたのではないだろうか。妻を故意に殺したにも関わらず、法では相当の罪で裁かれない堀内を、自らの手で断罪するということ。これが、本当に悪いことなのか、もし、これが許される行為だったのなら、そのまま未解決の連続殺人事件として見逃されるだろう。だが、やはり、どんな理由であれ、人を殺すことが罪なのであれば、きっと誰かによってこの真実が暴かれるはず、と。
「切断の向きが違う」。連続殺人ではないことを証明したのが、UDIの中堂(井浦新)であることにも注目したい。中堂も法では裁けない可能性が高い犯人に、最愛の人を殺された過去を持つ人物であることが、『アンナチュラル』で描かれた。自らの手で断罪しようとしたが、ミコト(石原さとみ)の説得によりギリギリのところで留まることができた。一線を超えずに済んだ中堂に対して、超えてしまったガマさん。この対比こそ、『アンナチュラル』の世界線と繋がっている意味だったのではないだろうか。
ガマさんは、志摩に「伊吹に伝えてくれ。お前にできることは、何もなかった。何もだ」と言い残して連行されていく。その言葉は、とても残酷だが、実にリアルだ。私たちは、誰も救えない。「偶然にもあのとき……」「振り返ってみればあれが……」というくらい、誰かの運命を変えるスイッチには、なろうとして“なれる”ものではなく、“なっている”ものなのだ。例えば「相棒」と呼びかけて手をしっかりと握ることだったり、肩を抱いて一緒に一歩を踏み出すことだったり。私たちにできることは、大切な人を笑顔にしたいと願って行動し続けることしかない。それが、結果的にスイッチになるはずだと信じて。
■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、黒川智花、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子、黒川智花
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS