『リモートで殺される』は画面上の恐怖をえぐり出す 『あな番』にも共通するテーマ性
犯人は由美子を知る人物で、一馬を通じて、由美子を殺した人間を知っている。となると、必然的に候補は絞られてくるのだが、リモートで視野が狭まり、通信が途絶えることを逆手に取って、犯人は巧妙に姿を隠す。リモートで会話している間、話し手は自分の背後に気付かず、ウェブカメラに映らない場所で、犯行が着実に進んでいく。飼い猫の奇妙な鳴き声や、返り血でウェブカメラが赤く染まるショットなど、リモートを生かした演出と、最小限のBGMに効果音で恐怖をあおる仕掛けが絶妙だった。
無人のリモート画面ほど怖いものはない。リモートでつながっているつもりでも、それは目に見える事実でしかなく、その過程で多くのものが欠落している。パズルの断片のような分割画面は、バラバラになった真実にもたとえられるだろう。見えないことの落とし穴と見えていることの恐怖というテーマは、顔の見える隣人が命を奪い合う『あなたの番です』にも通じるものだ。本編は真犯人が明らかになったところで終わるが、余韻を楽しみたい人はHuluで『殺人の裏側編』もご覧いただきたい。
リモートの画面に映し出されるのは、自分以外の参加者だ。『リモートで殺される』で映ったのは6人だが、厳密に言うなら、そこには1人欠けている。それは、最後まで顔を明かさなかった一馬かもしれないし、画面の前のあなたかもしれない。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
スペシャルドラマ『リモートで殺される』
Huluにて、配信中
出演:本田翼、新田真剣佑、柄本時生、早乙女太一、前野朋哉、齋藤飛鳥、前田敦子
企画 ・原案:秋元康
脚本:元麻布ファクトリー
監督:中田秀夫
音楽:川井憲次
チーププロデューサー:福士睦
プロデューサー:植野浩之、畠山直人、森田美桜(AOI Pro.)
制作協力:AOI Pro.
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
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