『MIU404』綾野剛×星野源のバディ感 “同じ側に見える2人”のキャスティングの狙いとは?

綾野剛×星野源の“和風塩顔”バディの狙い

 さらに巧みなのは、このバディに加え、ベテランの班長・陣馬(橋本じゅん)と、キャリア組でエリートの若造・九重(岡田健史)のバディ、桔梗(麻生久美子)とのチームにより、関係性や物語が立体感を持つこと。

 第2話までは、伊吹・志摩と、九重・陣馬の2組のバディを大雑把に分けるなら、口が立つ志摩と九重が同じ側に見えていた。しかし、第3話では、意外な対比が見える。

 冒頭では志摩と九重がピタゴラ装置について雑談をしていた。「何かのスイッチで道を間違える」と語る志摩に、「でも、それは自己責任です」とキッパリ言い放つ青々しい九重。そんな彼に志摩は言う。

「自分の道は自分で決めるべきだ。俺もそう思う。だけど、他人によって障害物の数は違う。正しい道に戻れる人もいれば、取り返しがつかなくなる人もいる。誰と出会うか、出会わないかだ」

 この回のテーマは「分岐点」。廃部となった元陸上部の部員たちがイタズラで虚偽の通報を繰り返していたが、元陸上部員の成川(鈴鹿央士)と勝俣(前田旺志)が二手に分かれ逃げる中、伊吹は勝俣を、九重が成川を追うことになる。

 ところが、元マネージャーが本物の猥褻犯に襲われ、事態は急変。勝俣に追いついた伊吹は猥褻犯のことを告げ、「逃げるか来るか。今決めろ」と選択させたのに対し、成川を追っていた九重は伝えなかった。

 結果、勝俣は罪を認めて謝罪したが、成川はそのまま逃走し、ネットに顔を晒され、行き場を失ってしまう。ピタゴラ装置のパチンコ玉をキャッチした伊吹と、取りこぼした九重。もし、少年たちが逃走中に出会った相手が、伊吹と九重で逆だったら、少年たちの運命もまた……とどうしても考えさせられてしまう。

 そんな中で志摩はいつの間にか「口が立ち、先回りして物事を考える理論派」ではなく、伊吹の可能性に賭ける、むしろ伊吹に近い側の人間に見えていた。もしかしたら「もともと優秀だった」が「相棒を殺した」と言われる出来事により、諦めてきたもの・封印してきたものが、伊吹との出会いで再び彼の中に戻りつつあるのか。

 ちなみに、第1話では伊吹が白、志摩は黒の衣装で、第2話では伊吹が黒、志摩が白の衣装と、反対になっていることも視聴者の間で話題になっていた。さらに第3話では、伊吹が赤と黒のシャツジャケット、志摩もまたラフなシャツに赤の自転車と、一体感が出ていた。

 最初は正反対のキャラなのかと思った2人が、回を重ねるごとにニコイチに見えてきて、むしろ今では凸凹の同じ側に見えている。もしかして雰囲気的に「同じ側に見える2人」をキャスティングしたのも、そこに狙いがあったのだろうか。

 そんな2人が第3話の終盤で共に感電しそうな危機に陥る。そこを救ってくれたのが陣馬だったが、2人のニコイチ感が高まり、楽しい雰囲気が加速する一方で、2人の根っこにある危うさも色濃く見えてきた。そこからつながる未来ははたして……? バディとして見せる化学変化の様々な色合いが、ますます続きの気になる作品に仕立てている。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、黒川智花、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子、黒川智花
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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