神木隆之介が『SPEC』ニノマエ役で開いた新たな扉 無邪気な狂気がギャップを生む
2010年に放送された『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』(TBS系、以下『SPEC』)が現在再放送されている。今や連続ドラマや映画で引っ張りだこの戸田恵梨香が加瀬亮と共にW主演を務める本作。主人公らを手こずらせる存在となるのが、当時まだ17歳の神木隆之介演じる一十一(ニノマエジュウイチ、以下ニノマエ)だ。
現在27歳へと成長した神木は、映画『フォルトゥナの瞳』では主人公を任され、NHKの大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』では物語のキーとなる重要な役を担った。かつては映画『妖怪大戦争』やドラマ『探偵学園Q』(日本テレビ系)で主演を務め、子役としてブレイク。可愛らしいルックスと透明感溢れる芝居が人気を博した。今やすっかり子役から俳優へと転身した神木だが、未だに子役時代のピュアで繊細な役の印象を持つ視聴者も多いゆえに、SNSではニノマエのダークな役柄に対して「神木くんこんな役もやるんだ」などと驚きの声もあがっていた。
神木の年齢は、本来であれば、まだまだ若手俳優にカテゴライズされてもおかしくないだろう。しかし、芸歴はすでに25年とベテランの風格。映画、ドラマへの出演も多く、子役から俳優への転身も苦労することなく乗り越えた。『千と千尋の神隠し』などジブリ作品では声優としても活躍しており、芝居の力は折り紙つきだ。
そんな神木の演じるニノマエは、無邪気さと背中合わせの狂気が魅力の役柄である。実際、当時のインタビューで神木は、ニノマエの役のオファーを受けたことについて「それまでそういう超人的な役を演じたことはなかったですし、悪役ということでどんな風に見える役にすればいいか? かなり悩みましたね」と回答(引用:【インタビュー】神木隆之介 『SPEC』のこと、ニノマエのこと、これからのこと | cinemacafe.net)。ニノマエが敵か味方か、曖昧さを持った役にするため、表情や動きひとつにも注意を払っていたという。
神木の持っていたクリーンな印象から一転、何のためらいもなく人を殺す冷酷さを持つニノマエという役は、神木のキャリアにも新たな風を吹かせた。神木はこれを皮切りに『るろうに剣心』の宗次郎、『神さまの言うとおり』の天谷武など、ヴィランを演じる機会が増え、新たな扉を開くことになる。神木の透明感あふれるルックスからは想像もつかない残忍な姿は視聴者にとってもセンセーショナルで、そのギャップこそが『SPEC』の世界観に、観る者をより強く引き込む要素となる。