勝新太郎と渡辺謙、二大俳優の対峙が見どころに? 『独眼竜政宗』を読み解く二つの軸
物語としての『独眼竜政宗』には、二つの軸がある。
一つは、政宗が、伊達家が生き延びるために豊臣秀吉(勝新太郎)、徳川家康(津川雅彦)といった天下人とどう対峙するかを描いた戦国武将としての物語。戦国時代末期に登場した政宗は“遅れてきた青年”で、劇中では「生まれてくるのが遅すぎた」と嘆く場面もある。そんな現実を踏まえた上でどうやって「自分の生き方を貫くのか」こそが、政宗の生涯のテーマとなるのだが、それが強く現れていたのが第24回「天下人」の、小田原に向かった政宗が秀吉と対面する場面だ。
おそらく今回の名場面集でも登場するかと思うのだが、ここでの勝新太郎の怪演は、大河ドラマ史に残る凄まじさで、老獪な秀吉と血気盛んな政宗が対峙する姿に、そのまま大御所の勝新太郎と若手でギラギラしていた渡辺謙という二大俳優が演技で対峙する姿と重ねられている。
もう一つの軸となるのが、フランシスコ・フォード・コッポラの映画『ゴッドファーザー』を彷彿とさせる伊達家内部の勢力争い。つまりホームドラマとしての側面なのだが、ここで面白いのが前述したように「父と息子」ではなく「母と息子」の確執が中心に添えられていること。政宗を愛しながら命を奪おうとするお東の方は複雑な内面を抱えた女性で、もうひとりの主人公だと言えよう。そんなお東の方を演じる岩下志麻の鬼気迫る演技もまた必見である。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■放送情報
特集番組『「麒麟がくる」までお待ちください 戦国大河ドラマ名場面スペシャル』
6月14日(日)『独眼竜政宗』
6月21日(日)『国盗り物語』
6月28日(日)『利家とまつ』
7月12日(日)『秀吉』
NHK総合にて、20:00〜20:45放送 ※土曜の再放送あり
NHK BSプレミアムにて、18:00〜18:45放送
7月26日(日)
「キャスト・スタッフが明かす大河ドラマの舞台裏」
NHK総合にて、19:30〜20:43放送
『東京都知事選開票速報』
NHK総合にて、7月5日(日)19:59~20:50放送
『ダーウィンが来た!「今こそ見たい!日本の大自然スペシャル」』
NHK総合にて、7月19日(日)19:30~20:43放送
『エール』第1回より再放送
NHK総合にて、6月29日〜(月〜土)8:00〜8:15放送
NHK BSプレミアム、BS 4Kにて、6月29日〜(月〜土)7:30〜7:45放送