『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズが後世に与えた影響 3部作3週連続放送を機に考える

『BTTF』シリーズが後世に与えた影響

 その後、娯楽映画においてタイムトラベルの要素は数多く出現することになったが、多くの観客が、わりとすんなりと、ややこしい時間移動というSF設定を理解できるようになったのには、間違いなく『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の功績がある。この大ヒット作品の基礎があってこそ、それを応用した、より複雑な設定の映画やドラマが成立するのである。

 その代表例が、現在人気を集めているSFアニメシリーズ『リック・アンド・モーティ』だ。これは、破滅的な科学者の老人リックと、その発明が引き起こす宇宙の危機に翻弄される孫モーティを主人公に、毎回かなり複雑なSF設定が登場する作品。このリックとモーティとは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドクとマーティのパロディである。そう、今日において『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、もはや誰もが観ているべき基礎教養でもあるのだ。

 最後に、タイムマシン映画で、いま最も観てもらいたいNetflix配給の『シー・ユー・イエスタデイ』(2019年)を紹介したい。アフリカ系のキャストで占められたアメリカ映画で、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』への多大なリスペクトを感じる要素がいくつも散りばめられるとともに、往年のファンへのサプライズも用意されている、嬉しい作品だ。

 物語は、科学に強い天才少女が、あるトラブルに遭った人物の命を救うためにタイムトラベルをするというもの。主人公は何度もタイムトラベルを繰り返し、試行錯誤し、走り続けることになる。この展開は、いつまでも解決を見ないアフリカ系アメリカ人への差別や暴行事件が絶えないアメリカ社会の象徴となっている。しかし、諦めず現状を変えようとする主人公の必死な姿に、胸が熱くなってくる傑作である。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に影響されたタイムマシン映画は、このように重要な問題を映し出す進化も見せている。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■放送情報
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
日本テレビ系にて、6月12日(金)21:00〜22:54放送
監督・脚本:ロバート・ゼメキス
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
出演:マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、リー・トンプソン、クリスピン・グローヴァー、 ウェンディ・ジョー・スパーバー
(c)1985 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.

『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』
日本テレビ系にて、6月19日(金)21:00〜22:54放送
監督:ロバート・ゼメキス
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
出演:マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、リー・トンプソン、トーマス・F・ウィルソン、エリザベス・シュー
(c)1989 Universal City Studios and U Drive Productions, Inc. All Rights Reserved.

『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』
日本テレビ系にて、6月26日(金)21:00〜22:54放送
監督・原案:ロバート・ゼメキス
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
出演:マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、メアリー・スティーンバージェン、 リー・トンプソン、トーマス・F・ウィルソン
(c)1990 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.

『レディ・プレイヤー1』
日本テレビ系にて、7月3日(金)21:00〜23:24放送
※放送枠30分拡大
※地上波初放送
監督・製作:スティーヴン・スピルバーグ
出演:タイ・シェリダン、オリヴィア・クック、 ベン・メンデルソーン、T・J・ミラー、 サイモン・ペッグ、 ハナ・ジョン=カーメン、 森崎ウィン
(c)Warner Bros. Entertainment Inc.

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