『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズが後世に与えた影響 3部作3週連続放送を機に考える
第1作は、評論家というよりも、とくに観客から絶大な評価を受け、当初は計画していなかった2作目が撮られることになる。『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』では、マーティーの息子が絶望的な状況を引き起こしてしまうという情報を基に、今回は30年後の未来にタイムトラベルしたマーティの冒険が描かれることになる。
救おうとした未来で新たなトラブルを引き起こしてしまったマーティは、その失敗を取り戻すために、またしても1955年へと戻ることに。面白いのは、「第1作のストーリーの裏では、じつはこんなことが行われていた」という、新たなストーリーがここで上書きされている点である。しかも、それが脚本上破綻のないように上手く描かれる。このようなタイムトラベルによる過去の複数の書き換えという、一種のミステリー仕立ての設定は、後に日本のゲーム、アニメ作品『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)』などでも使われることになる。
そして第3作では、なんと舞台が西部開拓時代へ。あまりにも過去に飛ばされてしまい戻れなくなったドクを救出するため、マーティは、荒くれ者たちが闊歩する町で、新たな冒険を繰り広げる。
完結編となるこの作品でも、第2作にチラリと出てきた、ある西部劇作品の伏線を重要な場面で回収するなど、タイムトラベルものならではといえる緻密かつマニアックな技巧が施されている。このような、熱心なファンがより楽しめるネタ、いわゆる“イースターエッグ”が散りばめられたのも、本作がメジャー作品ながら、同時にカルト的人気をも獲得し、広い層に愛されるようになった理由である。それはビデオが普及し始め、作品を何度も繰り返し視聴するようになった時代とも連動。本シリーズは新しい映画の楽しみ方を確立した、時代を代表するシリーズになったといえるのだ。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のシリーズはここまでとなったが、現在、新たに続編が公開される予定の、キアヌ・リーブス主演作『ビルとテッドの大冒険』(1989年)シリーズもまた、本シリーズのヒットを受けて製作され、同じくカルト的人気を得て愛されることになった作品だ。こちらはよりコメディー色が強く、おバカ高校生二人組が公衆電話ボックス型のタイムマシンで、歴史の授業の発表を乗り切るためだけにタイムトラベルして、本物の偉人に会うという荒唐無稽な物語だ。
なんといっても、頭がからっぽなキアヌの演技が見どころで、とくに2作目の『ビルとテッドの地獄旅行』(1991年)は評価が高い。このシリーズはアニメ化もされ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』同様、80年代以降のギーク(サブカルチャーのオタク)たちにとって重要な作品となった。それは、ギーク文化を礼讃した映画『レディ・プレイヤー1』(2018年)のイースターエッグとして登場することからも分かる。