『SPEC』が根強いファンを抱えているワケ 戸田恵梨香の役者人生を振り返る象徴的な作品に

10年ぶりに復活する『SPEC』を見届ける

 ところで本作の監督を務めたのは、同じくTBS刑事ドラマ『ケイゾク』シリーズを手がけた堤幸彦。脚本は同じく『ケイゾク』シリーズを担当した西荻弓絵で、プロデューサーも同じ布陣で植田博樹だ。『ケイゾク』と本作を関連づける存在が『SPEC』内にも登場する。主演の2人が所属する未詳の係長・野々村光太郎(竜雷太)だ。元捜査一課弐係(通称:ケイゾク)の係長で、別名・ゴリさん。主人公2人のデコボココンビの間で緩和剤の役目を果たし、軽妙なやり取りを繰り広げるチャーミングな存在(後半になるにしたがってシリアスな部分も見せ始める)。また、この野々村係長の年の離れた恋人役(というより愛人役)として登場する有村架純演じる正汽雅も注目ポイントの1つだ。当時10代の有村架純の初々しい婦警姿、演技に、この年の差カップルの2人のコメディ感溢れるやり取りが茶番なんだがまたクセになる。

 茶番と言えば刑事もの、推理もの作品にはお決まりの決め台詞が存在し毎話見せ場で登場するものだ。ただ、当麻のそれは非常に奇抜。事件に関連するワードを書道で半紙に書き出し、それを破って頭上に高く舞い上げる。舞い落ちる半紙の中、「いただきました」の決め台詞が出ればもう事件は解決に向かっている。それぞれのスペックホルダーが特殊能力を発動させるトリガーもまた個性的で面白い。

 主演を演じる戸田恵梨香の役への憑依ぶりはお見事だが、『劇場版SPEC~結~ 漸ノ篇』の舞台挨拶にて「シリーズが終わり、私の役者人生の第1ステージも終わった」と語り、本人曰く10年経った「今でも側にいる存在」だと言う本作。彼女にとっても大きな転機となった作品であることは間違いなさそうだ。

 幅広くシリーズ化された本作だが、2012年にスペシャルドラマ『SPEC〜翔〜』と映画『劇場版SPEC 天』に続き、2013年にはスペシャルドラマ『SPEC〜零〜』、映画『劇場版SPEC~結~』の“漸ノ篇”、“爻ノ篇”の2部作を公開し完結した。今回の再放送をきっかけに、『SPEC』沼にハマってしまう視聴者が少なくないだろうが、シリーズは列挙した通りの順番で視聴するのがオススメだ。また、これを機に21年前に放送された『ケイゾク』を観てみるのも良いかもしれない。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter:https://twitter.com/Tominokoji

■放送情報
『SPEC 一挙放送SP』
TBSにて放送(一部地域を除く)

第1話:6月11日(木)23:56〜24:55
第2話:6月12日(金)24:20~25:20
第3話:6月15日(月)23:56〜24:55
第4話:6月16日(火)23:56〜24:55
第5話:6月17日(水)23:56〜24:55
第6話:6月18日(木)23:56〜24:55
第7話:6月22日(月)23:56〜24:55
第8話:6月23日(火)23:56〜24:55
第9話:6月24日(水)23:56〜24:55
第10話:6月25日(木)23:56〜24:55

演出:堤幸彦、加藤新、今井夏木、金子文紀
脚本:西荻弓絵
プロデュース:植田博樹、今井夏木、赤羽智比呂(オフィスクレッシェンド)
出演者:戸田恵梨香、加瀬亮、福田沙紀、徳井優、安田顕、田中哲司、城田優、有村架純、伊藤毅、神木隆之介、椎名桔平(特別出演)、竜雷太
製作著作:TBS
制作協力:オフィスクレッシェンド
(c)TBS

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