筧美和子の振れ幅に、瀧本美織の支え 『ピーナッツバターサンドウィッチ』に集った女優たち

『ピナバタ』に集った女優たち

 女性ファッション誌『with』(講談社)での読者アンケートをもとに、“婚活世代”の女性たちのリアルな声を反映して描かれた同名漫画を実写ドラマ化した『ピーナッツバターサンドウィッチ』(MBSほか)。同作は矢作穂香と伊藤健太郎をダブル主演に迎えたラブコメディだが、さまざまなタイプの女優がキャストに名を連ねていた。

 主演の二人を差し置いて、どうしても個人的に一番注目してしまったのは筧美和子だ。彼女はこの世代の役者の中でも、女優としての自身のポジションを確立させている存在と呼んで差し支えないだろう。連続ドラマでのゲスト出演が多い彼女だが、同クールにジャンルの異なる作品に出演していることもある。そこで知ることができるのは、彼女の演者としての振れ幅と作品への順応性だ。

 恋愛リアリティショー『テラスハウス』(フジテレビ系)の『BOYS×GIRLS NEXT DOOR』で知名度を上げた彼女だが、あそこに見られた“筧本人の素顔”というものは、かぎりなく影を潜めているように思う。もちろん、“素顔”とはいえ、それは彼女自身のある側面に過ぎないことは当然のこと。次々と見せてくれる筧の新しい顔には、いつも楽しませてもらっている。そんな中でも、代表作となった映画『犬猿』(2018年)や『スマホを落としただけなのに』(2018年)で見せた、いわば小悪魔的な役どころが得意なように思える。しかし今作『ピーナッツバターサンドウィッチ』では、控えめで自信がない、いわばこれまで多く演じてきたキャラクターとは逆ベクトルの現代女性を演じていたのだ。

 また、“テラハ繋がり”で言えば、Niki(丹羽仁希)が今作で本格的な女優デビュー。『ALOHA STATE』に出演していた彼女は、“テラハ”出演よりも先に、モデルとして広く活躍していた。女性ファッション誌『JELLY』の専属モデルであり、ショーのランウェイを気高く歩みながら、俳優道への一歩も、このたび踏み出したのである。彼女が演じていたのは、本人の華やかなパブリックイメージを反映したような役どころ。佇まいだけで魅せる様はさすがだ。演じ手としてはまだまだこれからといったところだが、同世代の先輩女優たちに囲まれたことで、得られたものは大きかったのではないだろうか。

 主演を務めていた矢作はすでに芸歴10年を数える女優だが、ここ最近になって彼女の存在を認識した方も多いのではないか。『思春期ごっこ』(2014年)、『クレヴァニ、愛のトンネル(2015年)などの主演作があったものの、一時海外へと留学。帰国後に『花筐/HANAGATAMI』(2017年)で大林宣彦監督作品のヒロインという大役を務め、映画ファンを驚かせた。その後、プライムタイムで放送された『僕らは奇跡でできている』(2018年/カンテレ・フジテレビ系)のレギュラー出演で知名度が上がった印象である。彼女の特徴的な声と力強い発語は大きな武器だと思う。今後、彼女にしか得られないポジションを築いていくのではないだろうか。

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