朝ドラ『エール』を輝かせる親子の結びつき 唐沢寿明と窪田正孝が見せた息の合った芝居

『エール』唐沢と窪田、親子の結びつき

 東京に旅立つ裕一にとって、三郎はもう簡単に顔を合わせられる存在ではなくなってしまった。そんな父親の別れ際の言葉に、思わず目頭が熱くなった視聴者も多いのではないだろうか。三郎は喜多一の4代目だが、三男坊。商才があまりないにも関わらず、長男次男が相次いで亡くなったことで店を継ぐことになった。自身が家業を継ぐ環境にいたからか、裕一が夢を追うことに対しては寛大な様子を見せる。そんなバックボーンが見え隠れする裕一への愛は、父親が息子に送る最大の愛情表現だっただろう。三郎は影から裕一を支え、裕一に夢を託した男なのだ。

 そんな三郎を演じる唐沢は、裕一を演じる窪田を実の父親のように可愛がっている。窪田もまた唐沢を敬愛しており、2人の公私に渡る熱いコミュニケーションが父子のシーンを彩っていた。裕一は悩んだり苦しむたびに三郎に素直にその気持ちを吐露してきた。それらのシーンがより色濃く親子の結びつきを表現できたのは、唐沢と窪田の信頼関係があったからこそだ。息の合った芝居と、信頼関係は『エール』をより魅力的に輝かせただろう。

 ここから本作は舞台を東京へと移す。しばらく三郎の姿が見えなくなるかと思うと、なんだか寂しい気もする。

 しかし、裕一と音は夢へと歩みだしたばかり。家族の心配をよそに、新居探しで大忙しだった。やっと結ばれた2人は弾けんばかりの笑顔で寄り添い合う。次週はいよいよ久志(山崎育三郎)との再会が描かれるようだ。既に音は東京で久志と出会っている。音と久志、そして裕一と久志を巡る再会がどう描かれるかにも注目だ。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる