コロナ禍の時代に問う、高度医療のパラドックス 一挙再放送『JIN-仁-』を今観る意義

 ストーリーだけでなく、江戸の町並み全景をCGで作り出した映像や本格的な時代劇のセットや衣装、エモーショナルかつユーモアもある演出、MISIAと平井堅による主題歌。すべてにおいて、日本のエンターテインメント界の力を結集したドラマでもある。キャストも豪華で、ヒューマニズム全開の演技で見る者を引き込む仁役の大沢たかお、仁の婚約者と吉原の花魁という2役を艶やかな美しさで演じる中谷美紀、それとは対照的に仁の助手となる咲を演じ、けなげキャラで応援したくなる綾瀬はるか。そして、序盤ではまだ何者でもない龍馬をすっとぼけた表情で演じる内野聖陽が印象的だ。

 『JIN-仁-』はジャンルとしては歴史SFと言われるが、日曜劇場でタイムスリップものと言えば、最近も『テセウスの船』(TBS系)が放送されたばかり。その中で主人公の心(竹内涼真)が自らの意志とは関係なく過去に飛ばされてしまう展開は、本作で仁が江戸時代にスリップしてしまう荒唐無稽さにも通じる。『テセウスの船』にデジャブ感というか、どこか懐かしい感じを覚えたとしたら、『JIN-仁-』を観ていたからではないだろうか。

 仁が決して強いヒーローなどではなく、お人好しで自信のなさそうな一人の男であるのも、『テセウスの船』の心と共通する。そう、タイムスリップする主人公は、運命に翻弄されてなんぼ。同じ歴史SF、タイムスリップものである『アシガール』(NHKで再放送中)も『信長協奏曲』(フジテレビ系)でもそうだったが、主人公が否応なしに違う時代に飛ばされ、不条理な状況になんとか対応しようとしてあがくところが、観る者の共感を呼ぶのかもしれない。全国に緊急事態宣言が出され、自宅に閉じ込められた現在の私たちもまさに不条理の中にいる。ドラマはあくまでフィクションだが、100年後の22世紀あたりから、仁のようなドクターがタイムスリップしてきて、ワクチンを開発してくれたら元の生活に戻れるのに。今、『JIN-仁-』を観ると、そんな願望が胸に渦巻いてせつなくなりそうだ。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
『JIN-仁- レジェンド』
TBS系にて放送 ※一部地域を除く
4月18日(土)14:00~16:54
4月19日(日)14:00~17:00
4月25日(土)14:00~16:54
4月26日(日)14:00~17:00
5月2日(土)14:00~16:54
5月3日(日)14:00~17:00
出演:大沢たかお、綾瀬はるか、小出恵介、桐谷健太、田口浩正、戸田菜穂、武田鉄矢、、中村敦夫、高岡早紀、六平直政、麻生祐未、小日向文世、中谷美紀(特別出演)、内野聖陽
パート2出演:市村正親、佐藤隆太、市川亀治郎、藤本隆宏
原作:村上もとか「JIN-仁-」(集英社『SUPER JUMP』)
脚本:森下佳子
演出:平川雄一朗、山室大輔、那須田淳、川嶋龍太郎
プロデュース:石丸彰彦、津留正明、中井芳彦
製作著作:TBS
(c)TBS

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