公開延期になってもテレビで宣伝をする役者たち コロナショックが暴くイビツな慣習

 新型コロナウイルスの影響から営業休止が相次ぎ、週末の動員ランキングの紹介がほとんど意味をなさなくなって約1ヶ月になる。ランキングでは公開2週目の『囚われた国家』が10位に初登場しているが、遂に先週末は新作公開が1作もなし。今週末も1作もなし。来週末も1作もなし。情報の提供を受けている興行通信社は、遂に興収の数字も一切発表しなくなった。しかし、後世にこの未曾有の状況を伝え残すためにも、本コラムの連載は続けていきたい。

 配給大手の東宝の2020年3月の映画営業部門の成績は前年同期比8割減(https://toyokeizai.net/articles/-/344297)、シネコン大手のTOHOシネマズの2020年3月の興収は前年同期比6割減(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57752270X00C20A4X30000/)。先日アメリカでも、もし夏シーズン(アメリカでは6月から)までこの状態が続くようだったら、シネコン最大手のAMCが破産申請するのではないか(https://t.co/KQXJFIuUkX?amp=1)というニュースが報じられた。現在、国内のミニシアターが存続危機に瀕していることが盛んに報じられているが、このままでは国内外問わず映画産業全体が回復不可能なダメージを負うことになる。

 ここ数週間、民放のバラエティ番組では、公開延期となった映画や、撮影中断のため放送延期となったテレビドラマのプロモーションのためにゲスト出演している役者の姿が目立っていた。言うまでもなく、番組収録のタイミングでは作品が予定通り公開される前提でプロモーションのスケジュールが組まれていたため。本来ならば公開延期や放送延期に合わせて放送を先送りにしたいところだが、放送局側も収録済番組のストックが底をつきかけているため、プロモーションの意味をなさないプロモーションがされている番組も放送せざるをえないという悪循環が起こっている。

 これは、映画やテレビドラマの固有の問題であるだけでなく、作品のプロモーションのために出演するゲスト頼み(当然プロモーションなのでギャランティが発生するとしても最小限だ)の民放バラエティ番組のあり方や、国内の中規模公開以上の作品のほぼすべてに放送局が関与しているという製作委員会システムのあり方が仇となった、日本の芸能界、映画界、放送局の一蓮托生型ビジネスモデルそのものが巻き起こした惨状と言えるだろう。

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