『帝一の國』は結果的に“オールスター映画”に 菅田将暉、竹内涼真、永野芽郁らにもたらしたもの

菅田将暉ら『帝一の國』俳優の現在

 中でも本作の後に大出世したのは、帝一や菊馬とともに生徒会選を争う大鷹弾役を演じた竹内涼真を置いて他にはいない。NHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』と『過保護のカホコ』(日本テレビ系)と、いずれも本作の直後に出演した作品で一躍時の人になった竹内だが、それらの作品で共通していた爽やかで人情味あふれる努力家であり、また良い意味で人たらしなその雰囲気は、本作で板についたものといえよう。しかもブレイクした後でも、助演ポジションの役柄からカメオ出演程度の役柄まできちんとこなし、ダブル主演だった『センセイ君主』でも相手役の浜辺美波のキャラを引き立てる一歩引いた演技を見せるあたり、役柄として演じてきた努力家の部分は彼自身のものであったのかと思えてならない。それがあったからこそ、『テセウスの船』(TBS系)からはじまる2度目の大ブレイクがやってきたのであろう。

 もちろん、これだけパンチの効いた男たちの中で紅一点のヒロイン美美子を演じた永野芽郁も忘れてはなるまい。本作が公開された時には、主演作も含めて出演映画4本が立て続けに公開される急騰期だったわけだが、出演シーンが決して多くない本作でもドアを蹴破るダイナミックなキャラクターやエンディングのダンスなどおいしいところを独占する。少し奔放で危なっかしい感じが板につくのは紛れもなくNHK朝の連続テレビ小説『半分、青い。』からではあるが、その片鱗が本作ですでに現れているわけだ。昨年雑誌『Seventeen』を卒業し、女優として飛躍が期待されている彼女は、菅田との再共演となった『3年A組』で同世代の中でも際立つ存在であることを証明。『俺物語!!』や『ひるなかの流星』など、理想的な少女漫画ヒロインだった彼女が、これだけ興味深い女優へと進化しているとなれば、ずっと出演作を追いかけてきた甲斐がある。

 他にも『帝一の國』には、『同期のサクラ』(日本テレビ系)の好演で25歳にして名バイプレイヤーの地位を確立した岡山天音や、『3年A組』で永野と同様に生徒役で出演していた萩原利久、子役時代からキャリアを積み上げ昨年『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK総合)にも出演した井之脇海など、上で挙げたメインキャスト陣に追随する若手俳優たちが出演していた。公開から3年で価値を高めた本作は、もしかすれば将来的にはいま以上の価値を持つ作品に昇華していくのかもしれない。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『帝一の國』
フジテレビ系にて、4月6日(月)21:00~放送
出演:菅田将暉、野村周平、竹内涼真、間宮祥太朗、志尊淳、千葉雄大、永野芽郁、鈴木勝大、萩原利久、岡山天音、三河悠冴、井之脇海、木村了、榎木孝明、山路和弘、真飛聖、中村育二、吉田鋼太郎
監督:永井聡
脚本:いずみ吉紘
原作:古屋兎丸(集英社『ジャンプSQ.』)
企画・製作:フジテレビ
制作プロダクション:AOI Pro.
配給:東宝
発売元:フジテレビジョン
販売元:ポニーキャニオン
(c)2017フジテレビジョン 集英社 東宝
(c)古屋兎丸/集英社
公式サイト:teiichi.jp

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