戸田恵梨香の笑顔は回を重ねる度に魅力的に 『スカーレット』が描く変わらない一日を過ごす尊さ
NHK連続テレビ小説『スカーレット』も残すところ1週間となった。戸田恵梨香演じる川原喜美子の、時折零れるように笑う笑顔は、不思議なことに役柄が年を重ねれば重ねるほどキュートさを増し、いつもハッと心を奪われる。
そして、誰よりも「リアル」という言葉が相応しい、優しさも弱さも、零れ出る愛も、ありのままの表情が愛おしい松下洸平演じる八郎。子役の中須翔真時代から変わらず健気ないい子であり続け、特に父親との関係性は本当に微笑ましい限りである、伊藤健太郎演じる武志の真っ直ぐな好青年ぶり。信作(林遣都)はじめ楽しく愉快な大野一家。照子(大島優子)とバナナ好きの夫・敏春(本田大輔)。父親譲りの性格とド派手衣装が楽しい直子(桜庭ななみ)。
物語が終わりに近づき、顔を見せにきた、それぞれに信念を持って強く生きてきたことが一目でわかる、懐かしくかっこいい人々。彼らと出会えるのももう最後かと思うと、本当に、一日一日が愛おしい。
愛おしく優しい登場人物たち
喜美子の人生は、苦難の連続だった。お金や家族の心配もしなくてよくなり、背負っていたものが全てなくなって1人の生活に戸惑う、あのアンリ(烏丸せつこ)が舞い込んできた時期だけが彼女の唯一の空白の時間だったのかもしれない。それでも、このドラマのことで思い出すのは、愛おしく優しい登場人物たちの姿ばかりだ。
八郎と喜美子が元夫婦として、息子の闘病を支えるための、いわば共同戦線として築いた新しい関係は、互いの表情の変化や性格の違いを誰よりもわかり合い、たわいもないやりとりで笑い合う、本当に心地いい関係だ。川原一家は、いろんな荒波を越えて、互いにアドバイスし合い、時には分析し合う、最高の親子となり、親友・仲間となり、越えるべきライバルとなった。
そんな陶芸一家の成熟期はじめ、ドナー探しを契機に顔を見せにくる懐かしい人々の姿、さらには、武志の病気に心を痛めながらも、武志ができる限り最上の「いつもと変わらない一日」を過ごせるように、いつも明るい笑顔と気遣いを絶やさない、愛すべき信楽の人々が提供する笑いも、どれもこれもが、大崎(稲垣吾郎)の言葉「病気はつらいこともたくさんありますが、泣きたくなるような素晴らしい出来事もいっぱいおきます」そのままであると言える。