『テセウスの船』鈴木亮平を襲う村人たちの悪意 それぞれの“正義”が交錯し物語は最終局面へ

『テセウスの船』物語は最終局面へ

 みきおに代わる共犯者については、その正体をめぐっていよいよ問題の核心に入りつつある。共犯者は佐野に濡れ衣を着せるために、みきおをおとりにして佐野を呼び出しており、馬淵は監禁場所から脱出した佐野を留置場に入れる。その間、不法投棄されたゴミの中から「駐在日誌」というラベルの貼られたフロッピーディスクが見つかる。馬淵が佐野のワープロを調べると、一連の事件の犯行記録が保存されていた。そして青酸カリが佐野家の裏庭から見つかる。

 不法投棄を通報したのは田中正志で、監禁場所で犯人が握っていたナイフは徳本のものだ。心の正体を不審視していた石坂や、「図体でけえからなあ、あいつは」と意味深な言葉を発する井沢(六平直政)も含めて、村全体が佐野に向かってくるような錯覚に陥った。佐野に警察の目を向けさせ、そのタイミングで物証をそろえてすべての罪を佐野に着せる。確実に佐野を死刑にするため周到に張り巡らされた罠と、佐野に向けられた強烈な悪意に身震いした。

 ここに来てクローズアップされてきたのが「正義」という言葉。いかにも日曜劇場らしいテーマではあるが、佐野が生まれてくる心に付けようとした名前であり、馬淵が守ろうとするのも「警察全体の正義」である。また、みきおが佐野を憎むのは、鈴(白鳥玉季)にとっての「正義の味方」になるため。それぞれ正義を実現しようとしながらも、犯罪や権力の横暴にも結びつくという矛盾も抱えている。

 佐野が目指す正義は、家族や村の人の笑顔を守ることだ。最悪の事態が次々と起こる中で、唯一の希望は、警官に両脇を押さえられながらも家族に向けて佐野が見せる笑顔。なすすべなく佐野を見送るしかない心は、未来を守ることができるのだろうか?

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログtwitter

■放送情報
日曜劇場『テセウスの船』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:竹内涼真、榮倉奈々、安藤政信、貫地谷しほり、芦名星、竜星涼、せいや(霜降り明星)、今野浩喜、白鳥玉季、番家天嵩、上野樹里(特別出演)、ユースケ・サンタマリア、笹野高史、六平直政、麻生祐未、鈴木亮平
原作:東元俊哉『テセウスの船』(講談社モーニング刊)
脚本:高橋麻紀
演出:石井康晴、松木彩、山室大輔
プロデューサー:渡辺良介、八木亜未
製作:大映テレビ、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/theseusnofune/

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