実話を基にしたテレンス・マリックの新境地 『名もなき生涯』における「神の沈黙」のテーマを読む

『名もなき生涯』の「神の沈黙」のテーマ

 ナチスドイツの熱狂は、歴史のなかでは、ほんの一瞬に過ぎない。教会や聖堂もまた、いつかは朽ち果てるものだ。しかし、人々の暮らしや営みは、それらよりもはるかに長く続いている。そして厳かに存在するアルプスの山々は、さらに長く長く存在し続けている。本作は、卑小な悪に対する力強い存在を、最大限の映像美によって示しているように思えるのである。

 カトリック教会は2007年、フランツを聖人に次ぐ存在として認め、信徒としての名誉を回復させることになった。そして現在、ザンクト・ラーデグントの美しい農村の風景のなかには、ひっそりとフランツ・イェーガーシュテッターの記念碑が飾られている。

 ちなみに本作は、ブルーノ・ガンツ(『永遠と一日』、『ヒトラー 最期の12日間』)、ミカエル・ニクヴィスト(『ミレニアム』シリーズ、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』)最後の出演作でもある。二人の名優の姿も目に焼きつけておきたい。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『名もなき生涯』
全国公開中
監督:テレンス・マリック
出演:アウグスト・ディール、ヴァレリー・パフナー、ブルーノ・ガンツほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2019 Twentieth Century Fox
公式サイト: namonaki-shogai.jp
公式Twitter:twitter.com/foxsearchlightjp

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