『恋はつづくよどこまでも』が好調! 社会派な火曜ドラマ枠で王道ラブコメが成功したワケ
ライバルが魅力的であることも恋愛ドラマの必須条件だ。天堂が恋愛に踏み切れない理由には病死した恋人の存在があり、その恋人に瓜二つの妹みおり(蓮佛美沙子)が天堂の前に現れる。同じ頃、天堂と同期の医師・来生(毎熊克哉)も七瀬への思いを打ち明ける。
漫画原作ならではのベタな展開を魅力的にしているのは定評のある共演陣だ。来生を演じる毎熊は映画『万引き家族』や『AI崩壊』、連続テレビ小説『まんぷく』(NHK総合)など話題作に出演。遠回しに七瀬を見守る来生の天堂と違う意味での男気と優しさに触れて、SNS上では「来生担」を表明するアカウントが相次いでいる。
その他にも、実力派や若手の有望株をそろえたキャスティングは今期随一。特徴的なのは、佐藤健や香里奈、山本耕史など30代以上の主演クラスと、上白石をはじめ、吉川愛、堀田真由、渡邊圭祐と言った勢いのある若手を融合させているところだ。ここからはメイン視聴者である30~40代女性に加えて、10代、20代に訴求しようとする明確な意図が読み取れる。
もともと火曜ドラマがターゲットにしているのは、30~40代の女性と言われており、この中には働いている人や子育て中の主婦も含まれる。ライフスタイルが多様化し、職場や家庭で課題を抱えるこの年代にとって、社会的なテーマあるいはまったくリアリティを欠いた設定というある種両極端な割り切り方は、ドラマに求めるものとして合理的だ。
同枠の代表作は『逃げるは恥だが役に立つ』だろう。契約結婚ではじまった同居生活が次第にリアルな恋愛関係に発展していく様子を描き、「好きの搾取」という言葉に代表される恋愛を取り巻く権力関係をさりげなく暴きつつ、現実とファンタジーという同枠の性格を規定する作品だった。
また、同枠で女性作家の原作が次々と起用されてきたことも見逃せない。『逃げ恥』の海野つなみ、『あなたのことはそれほど』『G線上のあなたと私』のいくえみ綾、次クールで放送予定の『私の家政夫ナギサさん』は四ツ原フリコと女性漫画家であり、『わた定』は小説だが原作者は朱野帰子だ。制作サイドの方針もあると思われるが、「女性から見た社会と恋愛」というテーマは一貫しており、円城寺マキの原作による『恋つづ』もこの系譜に連なる作品と言える。
ドラマに現実との接点が求められる中、純粋にドラマのおもしろさを楽しめるのはラブコメならではの利点と言える。『わた定』や『G線上』でも、主人公の恋が進展する場面で明らかに視聴者の熱量が高まっていた。バレンタインデーとホワイトデーを間に挟む1月期の火曜ドラマは、昨年の『初めて恋をした日に読む話』(2019年1月期)などラブコメの登場頻度も高い。ぜひ『恋つづ』でスウィートなドラマの魅力を堪能してほしい。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/twitter
■放送情報
火曜ドラマ『恋はつづくよどこまでも』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
原作:円城寺マキ『恋はつづくよどこまでも』(小学館 プチコミックフラワーコミックスα刊)
出演:上白石萌音、佐藤健、毎熊克哉、昴生(ミキ)、渡邊圭祐、瀧内公美、吉川愛、堀田真由、香里奈、平岩紙、片瀬那奈、蓮佛美沙子、山本耕史
脚本:金子ありさ
演出:田中健太、福田亮介、金子文紀
チーフプロデューサー:磯山晶
編成・プロデューサー:宮崎真佐子
プロデューサー:松本明子
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS (c)円城寺マキ/小学館
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