伊藤沙莉の浅草氏は最高だ! 『映像研には手を出すな!』没入に誘うハスキーボイス

『映像研』伊藤沙莉の浅草氏は最高だ!

 昨年映画『ペット2』で初めての吹き替えを担当し、今回が初めてのテレビアニメ吹き替えへの挑戦である伊藤沙莉は、浅草みどりという人間のいろんな一面を、何パターンもの声の“色”を変えることで表現した。かつそれが個性として調和しているために、役が生きている。

 湯浅政明と「サイエンスSARU」が、大童澄瞳の原作コミックに、舞台の奈落を使ったダイナミックなアクションや、銭湯の2階の窓ガラスに重ね合った浅草・水沢2人の初めての合作を夕焼け空のオレンジ色に染め、永遠の煌きを加えたように。

 『ひよっこ』(NHK総合)、『全裸監督』(Netflix)、『獣になれない私たち』(日本テレビ系)、映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』など、どの映画やドラマにおいても絶妙にその役柄そのものとして存在する優れた女優である伊藤は、浅草みどりという人物に、描かれていない過去を想像させるほどの“命”を吹き込んだ。

 物語は第7話を終え、たった1人の力だけではどうにもならないが、協力者が増えることで相応の苦労も増えるアニメーション製作の大変さや、誰かに非難されるのではという表現する人間誰もがぶつかる不安、水崎ツバメの動きの表現に対する尋常じゃないこだわりと過去が描かれた。「最強の世界は自分で書くしかないもんな」と浅草は呟く。第7話最後の水崎の台詞「私は私を救わなきゃいけない。動きの1つ1つに感動する人に、私はここにいるって言わなくちゃいけないんだ」。この言葉に触発される若者が一体どれだけいるだろうか。つくづく、現代にこの作品が生まれたことに感謝せずにはいられないのである。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
TVアニメ『映像研には手を出すな!』
NHK総合にて、毎週日曜深夜24:10〜
原作:大童澄瞳(小学館『月刊!スピリッツ』連載中)
監督:湯浅政明
声の出演:伊藤沙莉、田村睦心、松岡美里ほか
キャラクターデザイン:浅野直之
音楽:オオルタイチ
アニメーション制作:サイエンスSARU
(c)2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会
公式サイト:eizouken-anime.com
公式Twitter:@Eizouken_anime

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