鈴木亮平のズッシリとした安定感 『テセウスの船』で見せる演技の頼もしさ
鈴木といえば、徹底した役作りをする俳優として知られている。俳優のタイプによっては(もちろん、作品のタイプにもよるが)、自身の素材を活かし、とくにこれといった準備をせずに撮影現場に入る者もいると聞く。100人の俳優がいれば、100通りの演じ方があるのだ。これらに良し悪しをつけることは難しく、演出者の好み次第ということもあるのだろう。
しかし、大河ドラマ『西郷どん』(2018年/NHK)で年間を通して主人公の西郷隆盛の生涯を演じた姿や、『天皇の料理番』 (2015年/TBS系)、映画『俺物語!!』(2015年)など、鈴木の、役の見た目に対するアプローチが尋常でないことは、“100通りの演じ方”の中でもただならぬものなのだと、誰もが分かるだろう。先述した『西郷どん』では、晩年の西郷を演じるために、体重がおよそ100キロまで達したという。
だがやはり俳優は、(その多くが)言葉を発し、身体を動かすものである。いくら見た目が役のリアリティを得ていようが、俳優が役の心情を理解していようが、それを表出させる技術がなければならない。そのあたりは今作『テセウスの船』でも、状況に合わせた鈴木の発声の仕方で伝わってくる。喜び、悲しみ、焦り、怒り、不安、恐れ……そういったシチュエーションないしは心情を、声だけでも的確に私たちに届けてくれているのだ。
鈴木はこれから今作で、年老いた文吾を演じることにもなる。主演の竹内を頼もしく支える彼の演技を、じっくりと味わっていきたいところだ。
■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter。
■放送情報
日曜劇場『テセウスの船』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:竹内涼真、榮倉奈々、安藤政信、貫地谷しほり、芦名星、竜星涼、せいや(霜降り明星)、今野浩喜、白鳥玉季、番家天嵩、上野樹里(特別出演)、ユースケ・サンタマリア、笹野高史、六平直政、麻生祐未、鈴木亮平
原作:東元俊哉『テセウスの船』(講談社モーニング刊)
脚本:高橋麻紀
演出:石井康晴、松木彩、山室大輔
プロデューサー:渡辺良介、八木亜未
製作:大映テレビ、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/theseusnofune/