『シロクロ』清野菜名の魅力は「声」にあり? 一人二役で存分に発揮する演技力
日曜ドラマ『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(読売テレビ・日本テレビ系)で、横浜流星とW主演を務める清野菜名。これまで『TOKYO TRIBE』や『今日から俺は!!』(日本テレビ系)などでアクション女優としても名を馳せた清野が、本作ではアクションはもちろん、一人二役という新たな難役に挑戦している。
『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』は、驚異的な身体能力を持つ謎の女・ミスパンダ(清野菜名)と彼女を操る男・飼育員(横浜流星)が、Mr.ノーコンプライアンス(佐藤二朗)からの依頼を受け、世の中のグレーな事件にシロクロつけるため、警察やマスコミが触れない「隠れた真相」を大胆に暴いていくという物語。ミスパンダの正体である川田レンは、かつては“天才美少女棋士”と騒がれたが、10年前のある事件をきっかけにネガティブな性格になり、成績が伸び悩んでいる。一方ミスパンダに変身した時は、レンとは対照的に超ポジティブでテンションの高い人物になり、悪事を徹底的に断罪し公開処刑していく。白髪ウィッグに黒いアイマスクを着用して「ミスパンダ」というエキセントリックな風貌と行動から、熱狂的なファンもいるダークヒーローだ。
2020年1月期ドラマで、13才~19才の男女に一番見られているドラマが『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(※ビデオリサーチ社調べ)だという。若い層に特に厚い支持を得ており、ミスパンダの言動にツッコミを入れたり、ミスパンダのイラストを描くなど、現実世界においても熱狂的なファンを獲得しつつある存在なのだ。そして、それはミスパンダがアクションとしてだけではなく、そのキャラクター自体に大きな魅力があることを意味する。
そんなミスパンダを演じる清野。清野は、清楚なイメージながらも、女優の中で1、2を争うほどのアクションが特徴だ。同枠で放送されていた『今日から俺は!!』でも、おしとやかで美人だが合気道の使い手、女番長と誤解されるほどの強さを持つ女子高生役を演じるなど、喧嘩や戦いとは無縁そうな風貌で激しいアクションをこなしてしまうギャップが、他のアクション女優にはない彼女の魅力。ただ決してアクションに頼っているわけではなく、映画『パーフェクト・レボリューション』では人格障害を抱えた風俗嬢という難しい役を感情豊かに演じ、黒柳徹子の半生を描いたNHK朝ドラ『トットちゃん!』では天真爛漫に、『半分、青い。』(ともにNHK総合)では純粋で瑞々しい演技を見せるなど、作品によって臨機応変に対応する演技派として活躍。様々な役を演じるが一貫しているのは上品さ。今回は繊細で大人しいレンと、自由奔放で明るいミスパンダを使い分ける役柄で、まさに清野の良さを余すところなくデフォルメ化したキャラと言っていいだろう。
激しいアクションは想定内だが、今回印象的なのは清野の声の良さ。ドラマ内でも名前が出た『名探偵コナン』を意識した口調なのかも知れないが、いつアンパンマンの声優をしてもおかしくない少年のような口調とハッキリとした声質が、マスク姿以上に非日常的なヒーロー感を演出しているように思う。一種のトレンドとも言えるジョーカータイプのアンチヒーローであるミスパンダの怖いところは、モラルやルールを無視して悪事を暴いていくところで、会議や葬式に突然乱入しては、人の注意など聞くけど構わず任務を続行していく狂気。
普通なら距離感を抱くが、清野の声の良さと、マスクをしていても滲み出る上品な立ち振る舞いで、登場人物たちと同じく視聴者も翻弄されミスパンダの話に聞き入ってしまう力がある。それが笑顔でグイグイ迫る恐ろしさは、清野のキャリアがあるからこそできる演技。番組公式インタビュー(https://www.ytv.co.jp/shirokuro/topics/)で「私としてはアメコミのヒーローのように、ダイナミックなイメージで演じています。やっていてすごく楽しいですし、新しい自分を発見できた気がします」と感想を述べている。