『映像研には手を出すな!』映像制作の悲喜こもごもをどう描く? 湯浅政明・英勉監督の起用を考える
湯浅政明監督は「最適解」
そんな魅力を持った『映像研』のアニメーション化を託されたのは湯浅政明監督だ。『マインド・ゲーム』や『夜明け告げるルーのうた』など、変幻自在、イマジネーションあふれる作風で知られる、日本アニメきっての個性派で、アニメの動きそのものの面白さを追求してきた湯浅監督が、アニメを作る楽しさを語る本作の監督に抜擢されるのは必然と言っていい。最適な人選と言って差し支えないだろう。
本作のプロデューサー、NHKエンタープライズの坂田淳氏は、「湯浅監督は、最初はアニメーターとして絵を描いていて、設定を作る仕事をはじめたらいろいろ調べて描くのが楽しいということに気が付き、そこから演出の面白さに目覚めていったので、浅草とシンクロするような体験をしている」と語り、「正しい人に監督をお願いできた」と対談で答えている。(週刊ビッグコミックスピリッツNo.2068 「アニメVS実写!プロデューサー対談 なぜ私は『映像研には手を出すな!』に手を出したのか?」)
TVアニメがどこまで映像化されるのか不明だが、1巻第1話で浅草が思いついた設定を披露すると、そのままシームレスに空想世界に主人公3人が入り込んでしまうシーンなどは湯浅監督の得意とするところだろう。原作はこうした現実と空想がないまぜになるシーンが多いが、これらのシーンが湯浅監督の自由な発想でどんな風に映像化されるのか楽しみだ。
映像研の実写に有利なポイントは?
さて、それでは実写映画の方はどのような期待ができるだろうか。
本作の実写映画の監督を務めるのは、『ヒロイン失格』や『賭ケグルイ』の英勉氏。漫画・アニメの実写化企画を多く手掛けている人物だ。本作のプロデューサー、上野裕平氏は英勉監督、乃木坂46主演の『あさひなぐ』を手掛けた人物で、今作でも主演に乃木坂46の齋藤飛鳥、山下美月、梅澤美波の3人を起用している。
前述したプロデューサー対談によると、本作の実写化企画は『あさひなぐ』の版元である小学館からまた作品を作りたいと話があり、上野氏が『映像研』以上に面白い作品はないと本作を指名したとのこと。企画書段階から乃木坂46主演、英勉監督で手掛けることを想定していたそうだ。
本作の実写版がどのようになるのか、現時点ではティザービジュアルも出ていないので詳しくはわからないのだが、上野氏の言葉を頼りにできる限り想像してみることにする。
まずキャスティングは、当初から乃木坂メンバーを想定していたとのことだが、主人公3人のチームワーク、丁々発止のやり取りを芝居で表現するには、普段から一緒に仕事しているアイドルグループから一括してチョイスするのは悪くない選択ではないだろうか。