『スカーレット』直子が語る“自由”の正体 信作と百合子の気になる関係も

『スカーレット』直子が語る“自由”の正体

 常治(北村一輝)の死後、初めて直子(桜庭ななみ)が帰ってくる。「うちは自由を手に入れたんや」と言う直子に喜美子(戸田恵梨香)は困惑。連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)第77話では、喜美子がずっと縛られていた「自由」の正体に迫る。

 「一発当てるで、一発当てて楽させたる」と目を輝かせる直子は、鮫島(正門良規)という男と大阪で商売を始めると言い、東京での仕事を辞めてきてしまった。具体的なプランもなく、安定した生活も目処も立たない直子だが、ひたすらに目を輝かせた。その背景には、直子が考える「自由」が大きく関わっていた。常治の死後、直子は、悲しいのはもちろんだが自由になった気がすると明かした。喜美子はそんな直子の言葉に唖然とする。しかし八郎(松下洸平)は、喜美子からその話を聞いて、誰しも親の死で自由を感じる節はあるものだと指摘。喜美子にはないのかと優しく問いかけた。

 八郎はそんな話をしながら喜美子の結われていた髪をそっと解く。そして手櫛でほぐしていくのであった。それはある種、「解かれていく喜美子」のメタファーであり、八郎なりに喜美子を自由にしてやりたいというサインだ。八郎は結婚の時も、喜美子の背負っているものを半分担うべきだと照子(大島優子)から言われている。喜美子が背負ってきた計り知れない責任とプレッシャーを、八郎なりに“ほぐして”あげたいと感じているのだろう。

 しかし翌日、ジョージ富士川(西川貴教)の実演会に2人で出かけることになっていたにも関わらず、武志(又野暁仁)が熱を出してしまう。喜美子は武志の面倒を見るためにジョージ富士川の実演会に行かず、家に残った。そこで八郎は、喜美子のために、照子の力を借りてジョージ富士川を川原家のアトリエに招くのであった。

 前半、直子が父から解放された「自由」について描かれていたのに反し、後半は喜美子が「自由」を犠牲にするシーンが描かれる。喜美子はこれまでも、ずっと家族のために「自由」を犠牲にし続けていた。それは必ずしも苦痛を伴うものではなく、時に愛に溢れ、満ち足りた高揚感さえあっただろう。しかし、心のどこかで、「自由」を手に入れている人へのままならない想いは隠せない。喜美子がこれから自身とどのように向き合っていくのか、注目したい。

 一方で、百合子(福田麻由子)と信作(林遣都)には新たな動きが。「俺な、もはや男の方が好きなんちゃうか思うくらい女の子が苦手や」という信作だが、百合子に「2mmくらいドキドキした」と言う。百合子はそんな言葉を聞き流し、友達と映画に行ってしまうのであったが、2人には新たな恋が芽生えそうな予感がする。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『スカーレット』
NHK総合にて、2019年9月30日(月)〜2020年3月放送予定
出演:戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、松下洸平、桜庭ななみ、福田麻由子、マギーほか
脚本:水橋文美江
制作統括:内田ゆき
プロデューサー:長谷知記
演出:中島由貴、佐藤譲
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/scarlet/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる