『同期のサクラ』は岡山天音あってこそ? バイプレーヤーにも主人公にもなれる稀有な才能

『同期のサクラ』は岡山天音あってこそ?

 『ひよっこ』以前からも数多くのドラマや映画でキャリアを積んできた岡山。その経歴がNHK教育で半世紀近く続いた長寿シリーズ『中学生日記』のオーディションから始まったというのも、最近の若手俳優陣の出自を考えるとなかなか珍しい。しかし、25歳の若さにして“バイプレイヤー”としての地位をほしいままにしているというのはそれ以上に珍しいのではないだろうか。柳楽優弥と瀬戸康史がダブル主演を務めた『合葬』や、野村周平や間宮祥太郎といった若手俳優たちが勢揃いした『ライチ☆光クラブ』や『帝一の國』など、思い返してみればあの作品にも出ていたのかと驚くものが多数ある彼のフィルモグラフィは、いかにもバイプレイヤーらしいものであろう。

 簡潔に言えば、主演俳優を立てて、必要以上に目立つことはないものの独特な存在感を発揮するというのがバイプレイヤーの条件だろう。しかし岡山の特殊なところは、主演作においてもその才を発揮し、これまでにないような主人公像を確立するところにある。昨年末から今年春にかけてBSスカパーで放送された『I’’s』で彼は、4人の女性の間で揺れ動く主人公を演じきった。徹底してうだつが上がらない優柔不断にもかかわらずなぜかモテるという、主人公らしからぬキャラクターをあまりにも自然に演じきるのだから漫画の世界がほぼそのままに具現化しても一寸の嫌味たらしさもなく、逆に岡山の雰囲気が愛らしく思えるほど綺麗にハマる。そしてそれと同時に、彼を取り巻く4人のヒロインたちの魅力を見事に引き立てるという離れ技も繰り出すのだ。その後の本田翼とダブル主演を果たした『ゆうべはお楽しみでしたね』(MBS・TBS系)もしかり、主演作ではないにしろWOWOWの『東京二十三区女』もしかり、それなりに目立つ位置にいたとしても一歩下がったところから共演女優の個性や魅力を引き立てる。まさに天性のバイプレイヤーにしかできない所業だ。

 それだけに今回の『同期のサクラ』のように、ヒロインの極めてユニークな雰囲気が中枢を担っている作品に、岡山の存在は不可欠だったと断言できる。しかもドラマ序盤では橋本愛演じる百合に告白して撃沈したり、年上の女性であるすみれ、すみれの娘であるつくし(粟野咲莉)と、彼の演じる蓮太郎の周りにはつねにまったくタイプの異なる女性キャラクターが存在していた点も見逃せない。同世代の俳優たちの中で個性の違いを見せるバイプレイヤーとしての才能に、女優陣を立てる一歩引いた演技。そしてこれまで演じてきた役どころにはなかった30代の落ち着きと一抹の疲労感すら漂わせた演技など、あらゆる引き出しを駆使していく本作は、岡山天音という俳優の価値をさらに高め、無二なものにしてくれることだろう。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『同期のサクラ』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:高畑充希、橋本愛、新田真剣佑、竜星涼、岡山天音、相武紗季、椎名桔平
脚本 : 遊川和彦
チーフプロデューサー : 西憲彦
プロデューサー : 大平太、田上リサ(AXON)
演出 : 明石広人、南雲聖一
制作協力 : AXON
製作著作 : 日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/sakura2019/
公式Twitter:https://twitter.com/douki_sakura

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