『俺の話は長い』生田斗真はスヌーピーに通じる? 2019年大活躍な姿に感じる不思議な“円熟味”
この秋から年末にかけて毎週土曜の、いや、一週間で一番の楽しみだったドラマ『俺の話は長い』(日本テレビ系)が終わってしまう。主人公、岸辺満31歳は6年にわたりニートで実家暮らし。今時珍しいほどのほのぼのとした家族の日常を描く温かさと、1時間のドラマ枠のなかで毎回30分で1話ずつ進むという設定のテンポのよさ。そして主演の生田斗真とその姉役・小池栄子の、まるで小劇場での抜群の会話劇を観せてもらっているかのような、コントのようなウィットと屁理屈に富んだ台詞の魅力と、それを囲む安田顕、清原果耶、原田美枝子の存在感も、完全に実写現代版サザエさんといった様相だったが、毎回最後にはホロリと涙するような人間味が隠されている。姉や周囲に散々「働け」と言われながら、それに屁理屈で対抗しながらもじつは懸命に自分の人生を考える30代の満の姿と、そこに毎回最後に「なぁ友よ 人生って最高だろう?」という歌い始めが印象的な関ジャニ∞による主題歌「友よ」がしみいり、笑いと人情味のある幸せな1時間を数週にわたり堪能させてもらってきた。
サザエさんの磯野家の如くこの先何年でも観ていたくなる愛すべき岸辺家の人々。満の姉の再婚相手である、安田顕演じる光司が「満くんて一緒にいて心地いい、コタツみたいだ」とコタツに入りながら話す場面では、この作品自体のコタツのようなぬくもりと抜け出せなさを感じたし、なんとなく満は漫画「PEANUTS」におけるスヌーピーのような存在なのだな、とも感じた。みんなが彼のもとになんだかんだと話にやってきて、言い得て妙なような、でもただの屁理屈なような、人生哲学のようなものを交わし合うさまが、ドラマの醍醐味でもあった。『俺の話は長い』は、ずっと新聞の4コマ漫画のように続いていってほしい、終わるなんてあまりに寂しい存在感を醸し出している。
グループに所属しない異例のジャニーズとも言われる生田斗真だが、長きに渡り役者業を中心に活躍してきた本領が今作では存分に発揮されている。2019年から2020年にかけて上演中の劇団新☆感線による『偽義経冥界歌』でも主演を務めており、今年は大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)での前半戦でも天狗倶楽部・三島弥彦役で強烈な印象を残した生田。また、6月には新国立劇場での上村聡史演出による日本初演の古典ギリシア悲劇『オレステイア』でなんと4時間半、舞台上にほぼ出ずっぱりという役どころを主演で務め話題を呼んだ。そしてこの一年を締めくくるかのような、これまた台詞量の半端ない『俺の話は長い』での日本テレビ系列ドラマでの初主演である。個人的には、かつての土曜夜9時枠で放送されていた、TOKIOの松岡昌宏主演『LOVE&PEACE』(日本テレビ系)に出演していたまだ10代の頃の生田斗真の存在感を思い出しながら感慨深くもなった。