松下由樹の不満がついに爆発! 『G線上のあなたと私』波瑠が分析した“女子力”の正体
本来、一番心が休まる存在である家族といるはずなのに、襲ってくる孤独と絶望。眞於(桜井ユキ)のように仕事も全て手放して部屋に閉じこもることもできない。也映子のようにビールを飲んで憂さ晴らしすることもできない。なぜなら、幸恵は大人と呼ぶには十分な年齢、人の母という立場があるから。誰かに迷惑をかけるような充電の仕方はできないと、1人向かったのは駅前のネットカフェ。
「大丈夫?」と尋ねられたら「大丈夫」と答えるしかない。泣いたり、怒ったり……人目をはばかることなく自分の考えを主張するのは、若さの勢いがあってこそ。也映子や理人のまっすぐな姿勢を愛しく、眩しく思って見ていたのは、もう自分の中からは通り過ぎてしまったものだから。
「でも誰でもそういう、自分でもどうしようもないものと戦ってるから、それは年齢とか関係ないから」その“大丈夫じゃない“幸恵を思って、女ゴコロを代弁する也映子。そして「頑張ろうとかキレイになろうとかって努力するパワーもあるよ……けど、それと同じくらい、ああ私ダメだぁって自分のことバンバンぶん殴るマイナスパワーも発動するの」と、“女子力“と呼ばれる、自分の中に湧き上がる何かについても。
「ありがとう」って誰かに必要とされたい、「一緒にいると楽しいね」って笑い合いたい、「バカだね」って弱い自分を抱きしめてほしい、「かわいいよ」って微笑んでほしい……也映子がプラスにもマイナスにも働くと分析した“女子力“の正体は、そんなふうに“愛されたい“という欲求そのものではないだろうか。
誰もが、少女のころのように無条件で愛されたい。だが、その時期に持っていた若さも、無垢さも、まっすぐさも……大人になるほどに手からこぼれ落ちていく。女ゴコロや女子力と、「女」とはついているものの、きっと性別も関係ない。也映子が歌った「女々しくて」の歌詞にも〈愛されたいね〉というフレーズが印象的に響く。誰もが、幸恵のように愛されたいけれど、素直に泣くこともできない辛い想いを胸に抱えて生きている。何歳になっても、どんな立場になっても。
きっと也映子に理人が歩み寄ったように「わかるように言って」が大切なのだ。私たちは同じ言語を話しているようで、その意味は1人ひとり違う。とくに“愛されたい“と弱っているときには、「そういう意味?」と首をかしげる使い方をしていることも少なくない。
大事なのは「“大丈夫“って言ってるときには“全然大丈夫じゃない“」と日頃から用例を伝えること。“この人がこういうことを言うときには、通常の意味とは逆“など、ひとつずつインプットしていくこと。そして、共通の脳内辞書を作っていくことが、きっと表面的な愛情表現の言葉よりもずっと愛を感じるはず。
その作業は、めんどくさいし、すごく根気がいる。例えるなら、バイオリンの弦に触れるようだ。明確な目印があるわけではないし、感覚を掴んでいくしかない。へんなところを押さえればとんでもない音が出るし、力を込めすぎれば切れてしまう。だが、そんなバイオリンのように厄介ないきものが、私たち人間なのだ。ハーモニーを楽しんだり、悲しいな音色が誰かに寄り添ったり。そんな人間愛に溢れたドラマが、次回いよいよ最終回だなんて今から寂しすぎる。
(文=佐藤結衣)
■放送情報
火曜ドラマ『G線上のあなたと私』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:波瑠、中川大志、松下由樹、桜井ユキ、鈴木伸之、滝沢カレンほか
原作:いくえみ綾『G線上のあなたと私』コミックス全4巻(集英社マーガレットコミックス刊)
脚本:安達奈緒子
演出:金子文紀、竹村謙太郎、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:佐藤敦司
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gsenjou/