佐々木蔵之介、ミステリーに明るさを添える 『シャーロック』で見せるコミカルさと温かさ

ミステリーに明るさを添える佐々木蔵之介

 また、主演映画『超高速!参勤交代』(2014年)ではコミカルなキャラクターで大いに笑いを誘い、第38回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を獲得するなど高い評価も得ている。しかし、このときはお人好しで大らか、家臣たちからも慕われている藩主の役で、今回の江藤とはまた一味違うコミカルさだった。江藤の場合は、明るく愉快なだけではない、ズルくていい加減、サボることと手柄を立てることばかりを考えている、ダーティーなイメージを併せ持ったコミカルさなのだ。

 実はこうした役柄こそが、佐々木の真骨頂と言っても過言ではない。現在公開中の映画『ひとよ』(白石和彌監督)でも佐々木は、一見真面目で良い人そうだが、ある出来事をきっかけに豹変するという役柄を演じている。幅広く懐の深い演技力を持っている佐々木だからこそ、一つの役の中で様々な面を見せることができるのだ。

 その演技力は、佐々木が舞台からキャリアをスタートさせた役者であることと密接に結びついている。1990年代、独特な演出舞台で小劇場界を席巻した劇団「惑星ピスタチオ」に所属していた佐々木は、旗揚げ公演から退団する1998年まで看板俳優の一人として活躍していた。劇団公演では一人何役もこなすことは珍しくなく、1作品の中で様々な役を演じてきた経験は、現在の佐々木の演技の幅広さに繋がっているのではないだろうか。そして現在も年に1本程度のペースで舞台へ出演していることにより、彼の演技力は常に磨かれているのだろう。

 『シャーロック』もいよいよ11月25日の放送で第8話を迎える。終盤に差し掛かり、原作で最強の敵として描かれているモリアーティ教授にあたる守谷壬三が今後どのような形で登場するのか、期待が高まる。恐らく一筋縄ではいかない手ごわい守谷との対決へと向かう中、佐々木演じる江藤がどのような役割を担うのかにも注目したい。

■久田絢子
フリーライター。新聞ライター兼編集(舞台担当)→俳優マネージャー→劇場広報→能楽関連お手伝い、と舞台業界を渡り歩き現在に至る。ウェブ「エンタメ特化型情報メディアSPICE」等で舞台・音楽などのエンタメ関連記事を中心に執筆中。

■放送情報
『シャーロック』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:ディーン・フジオカ、岩田剛典、山田真歩、ゆうたろう、佐々木蔵之介ほか
原作:アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズ』シリーズ
脚本:井上由美子
プロデュース:太田大
演出:西谷弘
制作・著作:フジテレビ第一制作室
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/sherlock/

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