『シャーロック』岩田剛典が確立した“ワトソン”としてのあり方 「最後」を予感させる感傷的なエピソードに

『シャーロック』岩田剛典の愛らしさ

 獅子雄(ディーン・フジオカ)と若宮(岩田剛典)が暮らす部屋に訪ねてきた少年・虎夫(山城琉飛)。行方不明になった祖父の寅二郎(伊武雅刀)を探してほしいという依頼を持ち込んできた彼は、若宮の嘘をいともたやすく見抜くほどの推理力を備えた“少年シャーロック”だった。18日に放送されたフジテレビ系列月9ドラマ『シャーロック』第7話は、一見するとドラマが終盤に差し掛かる前にワンクッションを置く感傷的なエピソードの様相を漂わせていく。しかし、もしかするとそれ以上の重要な意味を持つエピソードになるのかもしれない。

 虎夫に連れられて事件現場の河川敷にやってきた獅子雄たち。そこに残された足跡で“少年シャーロック”と推理合戦を始める“ワトソン”若宮(そういえば、今回のオープニングタイ
トルの入りは、獅子雄ではなく若宮がペンを取り、自ら“ワトソン”であることを明示するものであった)。そして何かの手がかりとなるであろう、河川敷に残されたタイヤ跡が登場する。“誘拐”と“タイヤ跡”のふたつから、今回のモチーフとなる“語られざる事件”は『プライオリ学校』の中に登場するものなのかと考えてしまうのはこれまでの流れからも避けられないものだろう。

 しかしながら、寅二郎が突然戻ってくる中盤から少しずつ明らかにされていく事件の詳細によって、新たに“金庫破り”というどこかピンとくるフレーズが登場し、極め付きはかつて大泥棒だった寅二郎と相棒の銀次(蛍雪次朗)に付けられていた“須磨寅の大鼠”という異名。これはまさに『サセックスの吸血鬼』の中で登場する「マチルダ・ブリッグス事件」の話題であがる“スマトラの大鼠”そのものだ。さらには、60年前に盗みに入った現場で相棒が親指を失って以来、寅二郎も金庫破りに欠かせない親指を使わなくなったというくだりからは『技師の親指』を想起させる。つまり今回のエピソードは、(おそらく“語られざる事件”がメインとなる以上は「マチルダ・ブリッグス事件」がベースになっているのだろうが)原作にあるいくつもの事件を跨ぐ、実に贅沢な作り込みがされていたというわけだ。

 そのようなサービス精神旺盛なストーリーだけに、前述したようなドラマ終盤戦へ向けたワンクッションという意味合いは少なからず含まれていたかもしれない。相棒の銀次の墓を前にした寅二郎に若宮が語りかける「よかったですね、相棒がいて」との言葉に、1人で立ち去る獅子雄。「そういう奴だよな」と呟く若宮のどこか寂しげな表情からは、若宮が自分が獅子雄の“相棒”であると自覚していることの何よりの表れであり、2人がたびたび喧嘩する様も、信頼があってからだということを示しているのであろう。それだけに、オープニングの“ワトソン”しかり、“少年シャーロック”にどこかムキになる姿も何とも愛らしいエッセンスだ。

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