『ジェミニマン』は映画史の分岐点に? 90年代から難航し続けたプロジェクトを実現させた最新技術

『ジェミニマン』に結集した技術の粋とは

 現在公開中の映画『ジェミニマン』。この映画のタイトルを聞いて、感慨深くなる人はかなりの映画通と言えるでしょう。というのも、『ジェミニマン』映画化の企画は90年代に生まれたものの、ストーリーを再現するには技術が足りなさすぎるという理由で何度か見送られた作品です。その間、クリント・イーストウッドのために脚本が書かれたり、ニコラス・ケイジが主役に抜擢されたり降板したり、ジョニー・デップの名前が上がったりしてきました。しかし、やっぱり技術の未熟さがネックとなり先送りされ、今になってようやく劇場公開という運びになった、知る人ぞ知るハリウッド屈指の実現困難作だったわけです。 

今の技術だからこそ生まれた「ジュニア」

 当時では再現できなかった技術というのは、デジタルで再現するクローン俳優。主役となる俳優を若くしたクローンを登場させる必要があったのですが、『ジェミニマン』の企画が持ち上がった時の技術は、見るに耐えないレベルでした。2002年に公開された『スコーピオン・キング』のデジタル化されたドウェイン・ジョンソンを見れば、その当時の技術がどんなものだったのか理解してもらえると思います。 

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 昨今の映画では故人をデジタルで蘇らせることも珍しくありません。例えば、『ローグ・ワン』ではデジタル加工で若返ったレイア姫とターキンが登場しましたし、『ブレードランナー2049』にはオリジナル当時の姿のレイチェルが、本物と見紛うリアルさで登場しています。 今回のデジタル化したウィル・スミスは故人ではないので、今のウィルに演技をさせてデジタルで若返らせるという手段も使えました。しかし、本作では初めからウィルのデジタルモデルを作り、そこにウィルの演技を当て込むという、若返りよりも難しく、俳優を起用するよりも予算がかかるテクニックを使うことにしたのです。

 当然、これは大きな挑戦です。なにせ、ウィル・スミスは何十年にわたって銀幕で活躍しているため、私たちは彼の若かりし頃から今に至るまでの顔、そして表情の作り方も熟知しています。こんなに広く顔の知られた俳優を、説得力のあるデジタル俳優にするなんて不可能のようにも思われました。しかし、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーは、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』で本物そっくりなCGトラを作ったアン・リー監督にメガホンを託すことで実現させました。 

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