今期、もっとも観るべきドラマは? 評論家が選ぶ、2019年秋の注目作ベスト5
3.G線上のあなたと私(TBS系)
3位の『G線上のあなたと私』は、いくえみ綾の同名漫画を波瑠主演でドラマ化。バイオリン教室で知り合った19歳の大学生男子と46歳のパート主婦と婚約破棄された27歳の元OL、3人の群像劇。脚本の安達奈緒子は、『きのう何食べた?』(テレビ東京系)、『サギデカ』(NHK総合)に続き、今年は3作目。どの作品もクオリティが高く、本作も見応えのある作品に仕上がっている。ショッピングモールを多用したロケーションがリアル。
4.同期のサクラ(日本テレビ系)
4位の『同期のサクラ』は2009年にゼネコンに就職した北野サクラ(高畑充希)と彼女の同僚たちの10年間を描いた一話一年のドラマ。脚本は『過保護のカホコ』(日本テレビ系)に続き高畑とタッグを組む遊川和彦。思ったことをズバズバ言うロボットのような喋り方をするヒロインが、周囲をかき乱すという展開は遊川作品の必勝プロット。当初は問題作『純と愛』(NHK総合)のセルフリメイクになるかと思われたが、今のところ不穏な要素はあまりない。
5.ブラック校則(日本テレビ系)
5位の『ブラック校則』は、深夜に放送されている異色の学園ドラマ。漫画『セトウツミ』の作者・比元和津也が脚本を手掛けている。男二人がボソボソとした口調で喋って話を進めるスタイルが強烈すぎて、物語がわかりにくいのが難点だが、権力に対する異議申し立ての物語を、校則という学生にとって身近な題材で見せようとする志の高さは評価したいので、今後の期待を込めて5位とした。11月に映画版も公開されるので、ドラマとどう連動していくのか楽しみ。キャスティングは全員ハマっているが中でもモトーラ世理奈がすばらしい。
今期は人気作の続編やベテラン脚本家のオリジナル作品が多く、どれもクオリティは高いのだが、新味がなく決定的な一手には欠けるというのが現時点の感想だ。
そんな中、突出して新しいと思ったのがメ~テレ制作の『本気のしるし』。
本広克行が総監督を務めたHTBの『チャンネルはそのまま!』など、近年はローカル局が映画監督にドラマ制作を依頼するという流れが生まれつつあり、魅力的な作品が次々と生まれているのだが、こういったローカル局の作品が見られること自体、ネット配信があるからだろう。筆者はTVerとGYAO!で『本気のしるし』を楽しんでいる。
作品単体としてはもちろんのこと、ローカル局制作ドラマの今後を占う意味でも注目したい作品である。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。