平野紫耀×橋本環奈の最強実写コンビだけじゃない! 『かぐや様は告らせたい』若手俳優が躍進

『かぐや様』若手俳優の有機的な絡み合い

 マンガのひとコマを取り出したようなオーバーなやり取りに、テロップやアニメーションが挿入され、ひじょうに分かりやすいつくりの作品となっているが、じっくりと観ていると、緻密な計算を思わせるシーンがいくつも目にとまる。まるで演劇的に展開する物語の中には、それこそ“恋愛ゲーム”らしく、遊戯性が見て取れるのだ。

 佐野勇斗、池間夏海、浅川梨奈、ゆうたろう、堀田真由といった若手俳優のホープが顔を揃えて主体となる男女の頭脳戦に絡み合い、合戦の様相を呈しているというのが本作の大きな魅力である。俳優たちの動きは相互作用し合い、ピタゴラスイッチよろしく、有機性のあるシーンをいくつも作り出している。それはたとえば単純に、Aの言動がBに影響を与え、その影響を受けたBの思いがけない反応が、たまたまそこに居合わせたCに影響を与え、思いがけず影響を受けてしまったCが……といったぐあいにである。

 これは、一筋縄ではいかない当事者間の恋愛というものと、その外側の世界との連関を思い起こさせ、笑いとともに、このとうぜんの事柄と関係性を再認識させてくれるだろう。計算された脚本・演出、若手俳優陣の共同作業から生み出された、演技の妙である。

 本作は、全編にわたってモノローグ(独白)が多用されている。それは物語の主体となる、白銀御行と四宮かぐやの“心の声”だ。恋愛にかぎらず、私たちは生きている以上、おそらくほとんどの者が、この“心の声”というものをもっている。ふつう、他者のそれを知ることは叶わないし、自分の中のそれを他者に知られることもない。万が一にもそんなことが可能となれば(たとえば、スピリチュアル的な何かの力をもってして!)、恋愛のスリルは完全に消失してしまうし、そればかりか、人間関係そのものにも支障をきたすこととなるだろう。だから私たちは、自分の心のうちをその厚い表情の下に隠してしまうのであるし、相手の“心の声”に耳を傾けるよう努めることが、“思いやり”につながることを知っている。

 しかしこうやって作品を通してみることで、他者の心の中に渦巻く感情、思考、思想を知り、共感したり、ひるがえって観客自身の内面を俯瞰的に整理してみたりできるようになるかもしれない。そこには思いがけず、独自の哲学とも呼べるものが生まれる可能性だってあるだろう。

 若手俳優陣の躍動する姿が魅力的な本作だが、ここに展開される「恋愛頭脳戦」はただ楽しいばかりでなく、青春時代から時を経た方々も、何かしらの教訓を得られるかもしれない(と、大いに願う!)。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter

■公開情報
『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』
全国東宝系にて公開中
原作:『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(赤坂アカ/集英社『週刊ヤングジャンプ』連載中)
企画プロデュース:平野隆
脚本:徳永友一
監督:河合勇人
出演:平野紫耀(King & Prince)、橋本環奈、佐野勇斗、池間夏海、浅川梨奈、堀田真由、ゆうたろう、高嶋政宏、佐藤二朗
配給:東宝
(c)2019 映画「かぐや様は告らせたい」製作委員会 (c)赤坂アカ/集英社
公式サイト:https://kaguyasama-movie.com/

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