『帰れない二人』ジャ・ジャンクー監督が語る、中国の変化 「きっとみんなからの共感を得られる」

『帰れない二人』監督インタビュー

「自分が作りたい映画を作り続けている」

ーー本作では、チャオは強い女性として描かれ、チャオに騙される男性が多く登場します。この男性と女性の描き方は意識的でしたか?

ジャ・ジャンクー:そうだね。本作においては、「お金が欲しい」「成功したい」という、さっき言ったような「金と権力」が男にとっての基準で、女性は愛と家庭に重きを置いて生きている。「金と権力」を求めるという男の弱点をチャオは知っていたからこそ、騙せたんだ。僕は男性の監督として、男の弱点をきちんと見つめて女性の強さを描いたつもりだよ。

ーーこれまでも多くのあなたの監督作でヒロインを務めてきた、チャオ役のチャオ・タオの魅力は?

ジャ・ジャンクー:彼女の素晴らしいところは、想像力が豊かで、かつ、それを演技で表現してくれることだ。本作は彼女のキャリアの中でも最高の演技だと思う。彼女がもともと持っている、すべてのものを出し切ってくれたといっても過言じゃない。僕が脚本を書いている時に気づかなかった、脚本に書けなかったことを、彼女は演技で表現してくれている。彼女は20代から40代までを演じないといけない役だったけれど、情感、話し方、歩き方といった細かい部分を、年齢別に工夫して演じてくれた。

ーー本作は、あなたにとって5作品目のカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作です。ここまで長いキャリアを歩みながら、常に高い評価を獲得してきた理由はなんだと思いますか?

ジャ・ジャンクー:僕は、自分の考えを妥協せず、粘り強く、誠実に自分が作りたい映画を作り続けている。そうしてこそ自分が一番自由で、いいものを作れる状態にいられると考えているよ。

(取材・文・写真=島田怜於) 

■公開情報
『帰れない二人』
Bunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館ほか全国公開中
監督・脚本:ジャ・ジャンクー
撮影:エリック・ゴーティエ
音楽:リン・チャン 
出演:チャオ・タオ、リャオ・ファン、ディアオ・イーナン、フォン・シャオガン
提供:ビターズ・エンド、朝日新聞社
配給:ビターズ・エンド
2018年/135分/中国=フランス/英題:Ash is Purest White
(c)2018 Xstream Pictures (Beijing) – MK Productions – ARTE France All rights reserved
公式サイト:www.bitters.co.jp/kaerenai

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる