『凪のお暇』高橋一生がついに素直な気持ちを明かす それぞれの“WISH”と向き合うということ

『凪のお暇』高橋一生が素直な気持ちを明かす

 さらに、時をほぼ同じくして慎二は兄・慎一(シソンヌ 長谷川忍)と再会。相変わらず仮面で生きていると指摘され、大きく動揺してしまう。オフィスラブの相手・円(唐田えりか)はピンチの場面を助けてもらったが、それでも「ありがとう」ではなく「申し訳ない」と言っていたのは、きっと本心の距離感。

 そして、ようやく自覚するのだ。自分が本当顔をさらけ出せるのは、凪しかいなかったこと。凪といるときこそ空気を吸うことができていたのだと。その凪をこのまま失ったら、自分はどうやって息をして、生きていけばいいのか。その不安が慎二を、第1話の凪と同じように過呼吸へと追い込むのだ。

 「多くの人のお暇となる場所を作りたい」。龍子と共にコインランドリー経営をすることが、自分のWISHだと自覚して動き出した凪。龍子も同じ思いで、自主的に事業計画書を作成する。そして、凪が望むことをしてあげるのではなく、凪の幸せをそばで応援することが自分のWISHだと気づき夢のイメージ図を描き上げるゴン。それぞれが、自分のWISHにまっすぐ向き合っていく中、慎二もようやく凪に素直な思いを吐露する。

 「大……好きだった。幸せにしてやりたかった。幸せにしてやりたかった。できなかった……ごめんな。ごめん……」。その感情もろ出しのぐしゃぐしゃな姿は、いつものスマートな慎二とは真逆だ。しかし、それが慎二の本当の姿。のたうち回って、奇声を発して、雨に濡れ、涙をぬぐい、そうして凪の元に何度も通ってきた姿を視聴者は知っている。

 「なんだこれ。バカか、俺」と自分の言動に混乱する慎二。その素直な姿を凪に見せることが、慎二にとってどれほど勇気のいることだったか。衝動的に復縁本を捨てたときもあったが、それでも凪が大事にしていたぬか床、そして豆苗はそのまま取ってあった。どちらも手をかけなければ、すぐにカビて腐ってしまうものたち。誰に言われなくても行動できること、そこに本当のWISHがある。

 WISHと向き合うのは勇気がいることだ。先述したように、大人になるほど傷つくリスクばかりが目につくからだ。そんなとき、コインランドリー経営を巡って、緑(三田佳子)がオーナーに言った言葉を思い出してみてはいかがだろうか。「夢のひとつも見せてあげられないなんて」と。これは人生の先輩から、若い世代にできることとして出た言葉だが、今の自分から、未来の自分にできることにも通じる。

 WISHを前に足がすくんだら、“今の私が、未来の私に夢のひとつも見せてあげられないなんて“と、勇気を奮い立たせてみようではないか。徒歩は徒歩、自転車は自転車、車は車でしか見られない景色があるように。きっと、その一歩を踏んだからこそ見られる景色が広がっていく。

 そんな気づきをくれるドラマも、いよいよクライマックスに向かって加速していく。それぞれのWISHがどのような形で叶えられていくのか。それとも、さらなるWISHが見つかるのか。ますます目が離せない。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
金曜ドラマ『凪のお暇』
TBS系にて、7月19日(金)スタート 毎週金曜22:00~22:54放送
出演:黒木華、高橋一生、中村倫也、市川実日子、吉田羊、片平なぎさ、三田佳子、瀧内公美、大塚千弘、藤本泉、水谷果穂、唐田えりか、白鳥玉季、中田クルミ、谷恭輔、田本清嵐、ファーストサマーウイカ
原作:コナリミサト『凪のお暇』(秋田書店『Eleganceイブ』連載)
脚本:大島里美
演出:坪井敏雄、山本剛義、土井裕泰
プロデューサー:中井芳彦
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/NAGI_NO_OITOMA/

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