山田涼介、中村倫也、宮沢氷魚 人生に疲れたヒロインを優しく癒やす“ビューネくん系男子”に注目!

『偽装不倫』の伴野丈(宮沢氷魚):ビューネくん度★☆☆

 『偽装不倫』で宮沢氷魚が演じる丈(じょう)は、『凪のお暇』のゴンや慎二とは違って、女性の抱く幻想を具現化したような男性である。背が高くて涼やかなイケメン、紳士的で優しく、職業はカメラマンでヨーロッパ帰り。まるでハーレクイン小説に出てくるようなハイスペック男子なのだが(収入だけは高くない様子)、なぜか結婚していると嘘をついた鐘子(杏)にアプローチしてくる。鐘子はその理由も分からないまま、彼の心をつなぎとめるために不倫を装うことに。丈に「僕と旅に出よう。2人で銀河鉄道に乗りたい」「鐘子さん、会いたかった」とストレートに愛を伝えられ、照れながらも、生き生きとしてくる。しかし、第4話(7月31日放送)では、病を抱える丈が不倫の関係を望んだ理由が明らかになった。自分が死んだ後に恋人を悲しませたくないから、鐘子が既婚者であることにかえって安心して付き合っていたとは、なんと不憫な……。『セミオトコ』と共通するカウントダウン感がある。これからは丈が「うっ」と言って頭を抱えるたびに、こちらも心配になってしまうので、癒し系としてはちょっとマイナスか。

 宮沢氷魚はどこかさびしげな表情を浮かべた自然体の演技で、絶妙なエモさを醸し出している。『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)で横浜流星がブレイクしたように、女性を一途に想う年下の男を演じた俳優は、人気に火がつく傾向がある。宮沢が2019年後半のブレイクスターになるかも注目だ。

 以上、3人のビューネくん系男子。彼らが癒やすのはいずれもアラサーの女性。『凪のお暇』と『偽装不倫』は原作の連載開始時期が違うので誤差があるが、ざっくりくくれば、ヒロインたちは元号が昭和から平成に代わる頃に生まれ、ものごころついた頃にはバブルは崩壊し、その後、希望の見えにくい長いデフレの時代を生きてきた。由香は賃金の低い工場作業員で、凪は企業の事務職(しかもドロップアウトした)、鐘子は派遣社員だ。思うような職に就けず、収入は低い上に安定せず、さらに恋愛も上手くいかず結婚する見込みもない。そんな現代日本のアラサーたちが男性に癒しを求めたところで、ヒロインと同世代の女性たちがドラマの中でぐらい夢を見たいと思ったとしても、いったい誰が責められるだろうか。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
金曜ナイトドラマ『セミオトコ』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~0:15放送
※一部地域で放送時間が異なる
出演:山田涼介、木南晴夏、今田美桜、三宅健、山崎静代、やついいちろう、北村有起哉、阿川佐和子、壇ふみ
脚本:岡田惠和
監督:宝来忠昭、竹園元(テレビ朝日)
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:服部宣之(テレビ朝日)、布施等(MMJ)、本郷達也(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/semio/

金曜ドラマ『凪のお暇』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:黒木華、高橋一生、中村倫也、市川実日子、吉田羊、片平なぎさ、三田佳子、瀧内公美、大塚千弘、藤本泉、水谷果穂、唐田えりか、白鳥玉季、中田クルミ、谷恭輔、田本清嵐、ファーストサマーウイカ
原作:コナリミサト『凪のお暇』(秋田書店『Eleganceイブ』連載)
脚本:大島里美
演出:坪井敏雄、山本剛義、土井裕泰
プロデューサー:中井芳彦
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/NAGI_NO_OITOMA/

『偽装不倫』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:杏、宮沢氷魚、瀬戸利樹、MEGUMI、谷原章介、仲間由紀恵ほか
原作:東村アキコ
脚本:衛藤凛 
演出:鈴木勇馬、南雲聖一 
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/gisouhurin/

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