山田裕貴の人間くささがにじみ出る名演 『なつぞら』なつと雪次郎の強固な友情

『なつぞら』なつと雪次郎の強固な友情

 そんな雪次郎を支えるのが、なつだ。雪次郎は序盤の第3週から登場し続けており、なつに周囲で一番近い男性キャラクターなのだ。その割には、この2人が恋仲になるような気配もなく、北海道から出てきた同志として、そして表現者として、硬い友情関係で結ばれていることを感じさせる。

 そんななつが、雪次郎の助けになる。何も聞かずに朝までお酒に付き合い、朝には「水飲む?」と促し、雪次郎の独白を正面から受け止める。この第17週ではなつも26歳になり、広瀬すずの演技アプローチにも少し変化が見て取れる。周囲から見守られることが多かったなつが、見守る立場にもなっていることを感じさせる一コマだった。

 そして雪次郎の独白は、まさに山田裕貴劇場である。今週において最も熱を帯びたシーンではないだろうか。他の作品でも恋に破れる役が多い山田裕貴だが、傷ついた人間が見せるそこはかとない人間くささを見事に表現した名演であった。山田裕貴は恋に破れた男の独白を演じたら、当代一なのだ。

 去り際に「亜矢美さんは咲太郎さんのこと 好きなんでないかい? 男として」と言い残す雪次郎。亜矢美(山口智子)、マダム(比嘉愛未)、咲太郎(岡田将生)を巡る恋模様もこれから期待できそうだ。

(文=安田周平)

■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、岡田将生、中川大志、染谷将太、川島明、小手伸也、渡辺麻友、山田裕貴、福地桃子、井浦新、貫地谷しほり、山口智子ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる