『なつぞら』中川大志が問いかけたアニメーションのリアリティ 次週は山田裕貴に波乱の予感
ここで論点となるのは、アニメーションのリアリティーとは何か。現実的な世界のリアリテイーを追求しようとしているのか、アニメーションにしかできない表現を追求しようとしているのかという東洋動画の問題点をずばり坂場は指摘して見せる。桃代(伊原六花)を誘って川村屋に訪れたなつはそこでも坂場と出会う。東大出身という坂場の学歴に惹かれ
ている桃代と、彼と馬が合わず嫌がるなつ。しかし、坂場のアニメーションは大人にも夢を与えるものだと思ったという考えが、子供向けにアニメーションを描くなつの固定概念を覆していく。「アニメーションにしかできない表現って……」そうつぶやくなつの元に光子(比嘉愛未)がやってきて、そこで会話は幕引きとなる。
第12週でなつが最後に苦悩するのは、雪次郎(山田裕貴)が川村屋を辞め、役者になるために咲太郎の劇団「赤い星座」の試験を受けたという報告だ。第10週から雪次郎は一人息子として雪月の後を継ぐことと演劇の道とで揺れる葛藤を見せていた。雪次郎を歓迎する咲太郎だが、なつは雪月の人々がどんな思いで東京に送り出したか気持ちが分かるため、彼を必死に説得する。
以前、「赤い星座」の女優・亀山蘭子を演じる鈴木杏樹が『ごごナマ』(NHK総合)に出演した際、今後山田との共演シーンが多くなっていくと話していたが、その真意は果たして。第13週「なつよ、“雪月”が大ピンチ」では雪次郎を中心とした物語が展開される一方で、予告には坂場が「アニメーションにしかできない表現は見つかりましたか」となつの手を取る姿も。坂場はまさかのなつの恋愛相手となるのか。多くの悩みを残したまま、来週に続けよ。
■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter
■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人/岡田将生、吉沢亮/安田顕、音尾琢真/小林綾子、高畑淳子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/