福山雅治は正義のヒーローになれるのか 『集団左遷!!』良心と保身の究極の選択を問う
また、抜き差しならない関係の片岡と横山は、これまでも直接対決を通じて火花を散らしてきたが、2人の間の亀裂がより明確になったのが第9話だった。「不正によって築かれた三友の未来を次の世代の行員たちに生きてほしくない」と語る片岡と、「銀行が生き残るのには脱銀行しかない」と主張する横山。ともに働く行員の人生を背負おうとする片岡と、三友銀行の未来のために不正な行為も辞さない横山。2人の考えは交わらない平行線のようである。それでも片岡が真っ向から自分の思いをぶつけてきたのは、どこかで横山を信じている部分があったためと思われる。また横山にしても、片岡に言いたいことを言わせ、その上で廃店を回避するチャンスも与えてきたという点でフェアな部分を持ち合わせている。しかし、三友銀行のためという共通の思いを持ちながら、理解し合えない片岡と横山の違いは、ここに来てとうとう決定的になってしまった。
片岡が不正を見過ごせない理由は多分に片岡自身の性格によるところも大きいが、それだけではない。一度不正な行為に手を染めてしまえば二度三度と過ちを繰り返すのが人間であり、一度失った信用を取り返すには当初の数倍の努力が必要だ。片岡の姿勢は信用を根本に置く銀行員として基本かつ王道と言える。一方で、清濁あわせ飲む藤田や目的を達成するために手段を選ばない横山は、ある意味で世間の写し鏡のようであり、彼らのもとで働く行員も見て見ぬふりをする者が大半だろう。計算も保身もなく、最初から負けを宿命づけられた戦いを続ける片岡は、梅原が言うとおり「馬鹿」なのかもしれない。しかし、そんな片岡の活躍を見て心の中で小さなガッツポーズをあげてしまう自分がいる。単純すぎるとわかっていても、正義のヒーローがどこかにいてほしいと願っているのだ。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/twitter
■放送情報
日曜劇場『集団左遷!!』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:福山雅治、香川照之、神木隆之介、中村アン、井之脇海、高橋和也、迫田孝也、増田修一朗、谷口翔太、橋本真実、市村正親、酒向芳、橋爪淳、津嘉山正種、尾美としのり、三上博史、八木亜希子、西田尚美、赤堀雅秋、パパイヤ鈴木
語り手:貫地谷しほり
三友銀行イメージガール:生田絵梨花(乃木坂46)
原作:江波戸哲夫『新装版銀行支店長』『集団左遷』(講談社文庫)
脚本:いずみ吉紘
プロデュース:飯田和孝、中前勇児
演出:平川雄一朗、田中健太
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/shudan-sasen/