『あなたの番です』マンションの住人らに徐々に変化が 殺人者になる葛藤をスリルに描く

『あなたの番です』殺人者になる葛藤

 さて、今回の劇中に登場した“教唆”というワードに注目しておきたい。刑法第61条の第1項に明記されている通り「人を教唆して犯罪を実行させたものには正犯の刑に科す」という、簡潔に言えば「誰かに誰かを殺させた人は、誰かを殺した人と同じ罪を背負う」といったところか。この“交換殺人ゲーム”の前提そのものがこの“教唆”に当たるのだと、住民会の中でも指摘されていたはずだ。とはいえ、例えば第1話の終盤で管理人が殺された時点で、殺した者は殺人者に、殺してほしいと書いた者は教唆犯になったわけだが、当然のように殺人が実行されない限り、誰も教唆犯にはなり得ないし殺人犯にもなり得ない。

 今回描かれた藤井の葛藤や心理的な負荷を分解してみると、「自分が誰かを殺さなくても、誰かが自分の書いた名前の人物を殺してしまったことで自分も殺人罪に問われる」ことに加え「いずれ自身も殺人犯になること」。そしてさらに、別の誰かからのほぼ強要のような形で「殺人犯になることを余儀なくされること」という3つの側面が存在している。これはこの先ある種のルーチンとして、各登場人物に拡がっていくのかもしれない。ここでふと、その引き金となった管理人の死が警察の判断通りに事故だったとしたら、と考えをめぐらせてみたくなってしまう。もしそうならば、なおさら人間の弱さを露見させるドラマとして面白さが増すのではないだろうか。

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■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■番組情報
日曜ドラマ『あなたの番です』
毎週日曜22:30〜放送
出演:原田知世、田中圭、西野七瀬、浅香航大、奈緒、山田真歩、三倉佳奈、大友花恋、金澤美穂、坪倉由幸(我が家)、中尾暢樹、小池亮介、井阪郁巳、荒木飛羽、袴田吉彦、片桐仁、真飛聖、和田聰宏、野間口徹、林泰文、片岡礼子、皆川猿時、徳井優、田中要次、長野里美、阪田マサノブ、大方斐紗子、峯村リエ、竹中直人、安藤政信、木村多江、生瀬勝久
企画・原案:秋元康
脚本:福原充則
演出:佐久間紀佳ほか
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:鈴間広枝、松山雅則
制作協力 :トータルメディアコミュニケーション
製作著作 :日本テレビ

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