『キングダム』山崎賢人×吉沢亮の絆になぜ引き込まれるのか 2人の信頼感が説得力を生む
こうして2人が共演してきた歴史と、『キングダム』で過酷な環境のもとで真剣な芝居を続けた後に、信と漂の別れのシーンを演じたからこそ、あの関係性の濃密さを実現できたのではないだろうかとも思えてくる。
ふたりは様々なキャラクターを演じたが、この3作においては、山崎はクールで寡黙で、しかしどこかぶれのない役を、吉沢は「綺麗な顔にもかかわらず」というエクスキューズのつく役が多かったように思う。それはそれで、彼らの一面を引き出していたとは思うのだが、『キングダム』はまた違った面を引き出されていると感じる。
『キングダム』を観て、山崎には、太陽のように明るく屈託がなく、自然と人を元気にし、人々を率いていく星のもとに生まれたような「動」の資質を。一方で吉沢には、どこか一歩引いた目線を持ち、なにをしていてもどこか憂いを持っているような表情で、「静」の資質を感じた。特に吉沢は漂とえい政という二役を演じているが、どちらも「静」のイメージがある。
本人の持つ資質と、信と漂、そしてえい政という人物がうまく合わさっていることで、より本人たちの関係性や背景を映画の中にも見出すことが可能となったのであろう。そのことで観客を、序盤であってもぐっと引き込む効果を持って“しまった”のではないかと感じた。もちろん“しまった”というのは、悪い意味ではなく良い効果としてである。
実写化を成功させるためには、その世界観を観客に信じさせるために、役とキャラクターが合致しているということが大切になってくる。『キングダム』は、山崎、吉沢以外のキャストも含めて、そんな本人の資質とキャラクターが見事に一致していたことで、物語に多いに観客を引き込んでいたのではないかと感じる。
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記。
■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。
■公開情報
『キングダム』
全国東宝系にて公開中
監督:佐藤信介
脚本:黒岩勉、佐藤信介、原泰久
出演:山崎賢人、吉沢亮、長澤まさみ、橋本環奈、本郷奏多、満島真之介、阿部進之介、深水元基、六平直政、高嶋政宏、要潤、橋本じゅん、坂口拓、宇梶剛士、加藤雅也、石橋蓮司、大沢たかお
配給:東宝
製作:映画「キングダム」製作委員会
(c)原泰久/集英社 (c)2019映画「キングダム」製作委員会
公式サイト:kingdom-the-movie.jp