『愛がなんだ』成田凌が憎むに憎めないーー自然体で体現する人間のサガ

『愛がなんだ』成田凌が憎むに憎めない

(c)2019『チワワちゃん』製作委員会

 この手のキャラクターを演じたもので言えば、今年はすでに『チワワちゃん』が公開。注目の若手俳優陣が共演を果たした本作で、成田は屈指のプレイボーイに扮し、狂宴の一端を担った。憎らしい人物ではあるが、思慮の浅い若者ゆえの人間らしい一面も垣間見せ、そこに共感し、どうにも彼の存在を否定できないという方もいたのではないだろうか。

 そんな成田が挑んだ最新作『愛がなんだ』では、憎むに憎めない青年を好演。“クズ”を全面に押し出したあからさまなものではなく、たびたび無垢な愛嬌も見せる。それを彼はごく控えめに、さらりと自然体で体現しているのだ。そこにはまるで、“キャッチ・アンド・リリース的才能”とも呼べるものを感じる。つまり、惹きつけて、突き放す、というものである。これは彼が演じる人物が、ヒロイン(岸井ゆきの)に対して取る態度と通ずるが、そこで私たちもまた翻弄されているのだ。

 本作には、成田がこれまで演じてきた愛嬌たっぷりの好青年や、無自覚に他人を傷つける若者、ヒール役の振り切れた性格など、それらが大なり小なり、そこかしこに見受けられる。出演してきた作品すべてを代表作と呼べるものにしてきた印象の成田だが、彼のキャリアを追っていく上で、この『愛がなんだ』は重要な一作と言えそうだ。

『愛がなんだ』特別映像

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter

■公開情報
『愛がなんだ』
全国公開中
原作:角田光代『愛がなんだ』(角川文庫刊)
監督:今泉力哉
脚本:澤井香織、今泉力哉
出演:岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也、片岡礼子、筒井真理子、江口のりこ
配給:エレファントハウス
(c)2019 映画「愛がなんだ」製作委員会
公式サイト:http://aigananda.com/

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