「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『バイス』
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、リアルサウンド映画部の宮川が『バイス』をプッシュします。
『バイス』
これはとんでもない映画だ。実在の人物を、しかもまだ記憶に新しい十数年前の出来事を描いているにも関わらず、ここまで攻めた挑発的な内容に仕上がっているとは……。というわけで『バイス』である。第88回アカデミー賞で作品賞を含む5部門にノミネートされ、見事脚色賞を受賞した『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のアダム・マッケイ監督、クリスチャン・ベール、そして製作のブラッド・ピットが再びタッグを組んだ本作は、第46代副大統領ディック・チェイニーを描いた社会派ブラック・コメディだ。
マッケイ監督は前作『マネー・ショート 華麗なる大逆転』でリーマン・ショックの裏側を斬新な視点で描いたが、ある程度の専門的な知識が必要という点で、多くの観客に受け入れられにくかった部分があったのは間違いないだろう。しかし政治をテーマにした本作では、『俺たちニュースキャスター』や『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』などを手がけたマッケイ監督らしいコメディ演出と、ジョージ・W・ブッシュ政権を影で操ったディック・チェイニーの悪行を告発する社会派映画としての側面が非常にいいバランスで描かれている。
特筆すべきは、何と言ってもキャスト陣の再現度だろう。役作りで別人にならせたら右に出る者はいないクリスチャン・ベールはもはや当たり前のようにディック・チェイニーになっているし、ジョージ・W・ブッシュ役のサム・ロックウェル、ドナルド・ラムズフェルド役のスティーヴ・カレル、リン・チェイニー役のエイミー・アダムス、コリン・パウエル役のタイラー・ペリー、コンドリーザ・ライス役のリサ・ゲイ・ハミルトンらが、可能な限り当時の本人たちに似せにきている。クリスチャン・ベールにおいては、映画を観終わった段階で実際のクリスチャン・ベールの顔が出てこなくなるぐらい。それほど強烈なインパクトを残している。見事アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞に輝いたのも納得だ。