どうしようもない現実を抱えるデリヘル嬢たちーー『フルーツ宅配便』を見守る濱田岳の奮闘

『フルーツ宅配便』デリヘル嬢たちの現実

 テレビ東京系「ドラマ24」枠で放送されている『フルーツ宅配便』が最終回を迎える。デリバリーヘルス店「フルーツ宅配便」を舞台に、濱田岳演じる主人公・店長代理(後に店長)の咲田と、そこで働くデリヘル嬢たちの姿を描く群像劇だ。原作は鈴木良雄による同名コミック。『孤狼の血』、『麻雀放浪記2020』の白石和彌、『横道世之介』、『南極料理人』の沖田修一らが監督を務めた。

 デリヘルを舞台にした深夜ドラマと聞き、いわゆる「お色気ドラマ」を想像して敬遠した人もいるかもしれないが、そういう人はかなり損をしている。個人的には今クールのドラマでナンバー1の出来だと思う。

デリヘル嬢たちを取り巻く数限りない「問題」


 「フルーツ宅配便」で働く女性たちは、みんな果物の源氏名がついている。ナンバー1の人気嬢のみかん(徳永えり)は、ナンバーワンゆえにデリヘル嬢をレイプした動画を公開して金を稼ぐ男たちに狙われてしまう。ナンバー2のイチゴ(山下リオ)は高齢者の客(嶋田久作)に惚れられてストーキングされる。暗くて内気なレモン(北原里英)は客からチェンジされてしまいがちだ。

 ほかにも、夫からのDVで顔に大きなアザをつけられたシングルマザーのゆず(内山理名)、就職したブラック起業で詐欺に遭ったモモ(成海璃子)、整形で人生を変えたいスイカ(うらじぬの)。高校受験を控えた娘の学費のために直引き(直接客と会う行為)をするスダチ(内田慈)、「お金がすべて」と言い切って犯罪まがいのことも平気でやるサクランボ(筧美和子)、覚せい剤に溺れてしまうシングルマザーのブルーベリー(中村ゆり)、複数の男性に結婚詐欺をして逃げ回っているカボス(松本若菜)、客に妊娠させられてしまうスモモ(阿部純子)などの女性が「フルーツ宅配便」に出入りしている。なかには夜はスナックのママとして働く豪胆なグァバ(松岡依都美)、この道50年以上という伝説の風俗嬢・ドラゴンフルーツ(山口美也子)なんて女性もいた。

 登場人物のプロフィールを見ればわかるように、デリヘル――というより、デリヘルで働いている女性を取り巻く問題は数限りない。抜け出せない貧困、いわれなき暴力、薬物汚染、悪徳店による搾取、客からの見下す視線や暴言、望まない妊娠……犯罪に巻き込まれることもあれば、追い込まれた彼女たち自身が犯罪に手を染めてしまうこともある。何気ない顔で出勤し、日々風俗の仕事をこなしているように見えるが、彼女たちの足元にはぬかるみのような暗闇が広がっているのだ。

 しかし、これらのいくらでも悲惨に描くことができそうな素材を『フルーツ宅配便』は極力抑えたタッチで、丁寧に、優しく、そしてフェアに綴ってきた。言い忘れていたが、「お色気シーン」と呼ばれるような扇情的なシーンもない。

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