『3年A組』の成功は『仮面ライダービルド』の経験があってこそ? 武藤将吾が表現する“正義”とは

『3年A組』脚本家が表現する“正義”への信念

 毎週日曜日の朝、ヒロイン/ヒーローが活躍する作品が放送されている。楽しみにしている子どもたち――もちろん、大人だって楽しんでいい――はきっと多いはずだ。時代がどれだけ進んでも、ヒロイン/ヒーローへの憧れは形を変えながら存在し続ける。

 そして、同じく日曜の夜に放送されている『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)。毎度予想のつかない展開が広がり、残すところ2話となる今も、その最終回の形が見当もつかない。本作はそんなストーリーのみならず、“特撮”という観点からも、何かと反響を呼んでいる。『仮面ライダービルド』や『仮面ライダーW』(ともにテレビ朝日系)を彷彿とさせる要素が随所で散りばめられており、意外な楽しみ方が隠されているのだ。『3年A組』と『ビルド』はいずれも武藤将吾が脚本を務めたほか、柊一颯役の菅田将暉は『W』で主演を務めていたこともあり、その盛り上がりはひとしおだ。特撮作品と『3年A組』の接点というのは、『3年A組』の細部に施されたもの――例えば、第7話で映ったポスターが、『仮面ライダーW』の有名な台詞を連想させることなど――に限らず、“正義”を描こうとする点で共通するところがあるように思える。

 『3年A組』と『ビルド』は、深い部分で繋がっている。両作を手がけた脚本家・武藤将吾の『ビルド』による実験と成功が『3年A組』に生かされているのだ。その大きな鍵となるのが「アンロック」(=秘密が明らかになる)型のストーリーシステムだ。

 『ビルド』は主人公・桐生戦兎(犬飼貴丈)が記憶を失っており、自身が何者かを探すところから物語が始まる。相棒の万丈龍我(赤楚衛二)や、ヒロインの石動美空(高田夏帆)すら過去が不明なところが多く、登場人物全員に隠された秘密があるという状況で、その秘密がアンロックされるごとにストーリーのステージが上がっていくという作りになっている。これは、たとえば漫画『進撃の巨人』や海外ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』などで採用されており、プロットの構築さえできていれば、裏をかきつつさらなる興奮へと誘える、非常に視聴意欲を刺激するシステムである。

 ひるがえって『3年A組』の主人公の柊は、物語の始まりからダークヒーロー的な雰囲気を身にまとっている。彼が緻密に作り上げてきたシナリオのもと、生徒や教師の謎が一つずつ解き明かされていき、やがては大きな真実にたどり着くとされる物語である。これは、脚本家・武藤氏が『ビルド』で得た手応えを『3年A組』に導入することで、より大きなうねりを起こすことに成功していると言えるだろう。

 また、武藤氏が『ビルド』で得た経験で『3年A組』で大きく作用しているのが「ネットの声」だ。『3年A組』は作中でもリアルタイム視聴でも、様々なネットの声がフィーチャーされているが、『ビルド』の放送時に盛り上がっていたのは「#nitiasa」のハッシュタグだ。朝8時30分から10時までの「プリキュア」「ライダー」「戦隊」までを実況するこのハッシュタグが毎週トレンド入りする。武藤氏はこの「#nitiasa」から様々なユーザーの反響を学び、『3年A組』にフィードバックすることによって、作中のネットの声や、それに揺れる世間や生徒の姿にリアリティを与え、TVの前の視聴者の反応も予測しながら脚本を書いたのではないだろうか。それほど、『3年A組』の脚本には、リアタイ視聴欲・リアタイツイートを刺激する要素がうまく込められているのだ。

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