可笑しくも切ない小日向文世の哀愁 『メゾン・ド・ポリス』新たな展開も?
高平(小日向文世)の娘・小梅(水谷果穂)がメゾンに現れ、彼女のボーイフレンド・駿(水石亜飛夢)の祖母が襲撃された事件を捜査してほしいと依頼してくる。玄関の鍵が閉められた密室の中で発生したことから、鍵を持っている身内の犯行であると思われ、また金品が奪われた引き出しに指紋が付いていたことから、駿に疑いの目が向けられているというのだ。TBS系列金曜ドラマ『メゾン・ド・ポリス』第6話は、典型的な王道ミステリーの形と典型的な家族のドラマが融合したユニークなエピソードであった。
娘には自分が“伝説の刑事”であり、メゾンの面々が部下だと嘘を付いていた高平。長年所轄署の警務課に勤め、現場の刑事になることに憧れを抱き、これまでも事件のたびに独自の(しかも空回りな)推理を繰り出してきた高平らしい見栄の張り方だ。そんな高平に不満タラタラのメゾンのおじさまたちであったが、娘の彼氏の存在を知ってショックを受ける高平に発破をかけながら、事件の解決に向けて協力し合うあたり、彼らの仲の良さを改めて垣間見ることができよう。
それにしても今回のエピソードで特筆すべきは、中盤以降のほぼすべてのシーンがメゾンの中だけで展開するということだろう。劇中でも言われていたように、ミステリーの女王アガサ・クリスティ作品さながらの“容疑者たちの晩餐会”が催され、密室で起きた事件の真相をめぐり私利私欲をさらけ出す容疑者たち。そして骨董品の価値を知っているか否かで犯人であることが明るみになるなど、洗練されたクリスティ調のミステリーを完全に踏襲。どことなく、被害者の孫を介して捜査がはじまるあたりからも「ねじれた家」を想起させられてしまった。
その一方で、夏目(西島秀俊)が思わず「古っ」と言ってしまうほど、刑事コロンボを真似たような出で立ちで形から入りキメてみるものの、案の定サポートがないと何もできなくなってしまう高平。「怒ると手がつけられなくなるほどの鬼刑事だった」という設定や、醸し出す雰囲気からは『古畑任三郎』のファイナルエピソード「ラストダンス」で小日向が演じていた「鬼警部ブルガリ三四郎」を思い出した人も少なくないだろう。いずれにしても、身内に虚飾を張ってもバレているというのはお約束の展開。娘にカッコ良い姿を見せたいと願う父親の哀愁がひしひしと漂い、可笑しくもあり、少々切なくもある。